■書名:すぐに使える介護のための接遇講座
■著者:山岡 仁美
■発行元:中央法規出版
■発行年月:2011年11月11日
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技術とともに大切な介護現場での接遇マナーやスキルを解説
外出先のレストランや旅先のホテルなどでプロ意識の高い気持ちのよい対応を受けて、安心したり心が和んだ経験をお持ちではないだろうか。
その反対に「この対応はないんじゃない?」と嫌な経験をした人もいるかもしれない。
本書の著者である山岡仁美さんは、介護がサービス業として確立されている今、介護職にもレストランやデパート、ホテルなどのサービス業と同様に「接遇力」が大切であると述べている。
「接遇」とは、大辞泉(小学館)によると、「もてなすこと。応接すること」とある。
「介護の仕事は自転車をこぐのと似ている」と山岡さん。
前輪は「技術や資格」。後輪は「接遇やコミュニケーション」。
両輪のバランスが取れていてこそうまく仕事がまわっていく。
利用者への接し方について山岡さんはこのように語っている。
<ついつい我流に偏ったり、悪気はないのに失礼な態度になりがちだったりというように、気づかないうちに、ご利用者様に対する尊厳の気持ちやご家族様への配慮が等閑(なおざり)になりがちです>
後輪にあたる接遇に不具合があると、いつのまにか介護がうまくいかない展開になってしまうのだという。
介護施設の中でも、特に有料老人ホームなどの場合、入居にかかる費用が特養などに比べて高い。
入居者や家族も、比較的裕福な人が多く、一流ホテルやレストラン並みの接客マナーがあって当然、と考えている人もある。
敬語や言葉使いなどにも、高いレベルを求められがちだ。
本書では接遇力、しいては介護力をアップするさまざまな方法を紹介している。
同じことを利用者に伝えるにしても、言い方を変えるだけで受け取る側の印象も変わる。
ひとつ、例をあげてみよう。
利用者から声をかけられているが、今は手が離せない。
このような状況のとき何といったら利用者は安心するだろうか。
「今はとりかかれませんが、それが終わってからはいかがですか?」
「私は手を離せないですから、私から○○さんにお願いできますよ」
どうだろう、「今は私は対応できない」と伝えるにしても、ワンクッション、プラスアルファの言葉を足すだけで、利用者はなおざりにはされていないと、安心するのではないだろうか。
本書ではそのほか、基本スキルとして下記のことを紹介している。
・身だしなみ、挨拶
・信頼度を築き上げる表現
・相手や状況を知るための”聴き方”
・相手の心をほぐす表情
・心を伝える言葉遣い
また、応用スキルとして「クレーム対応」「接遇力を醸成させるためのコミュニケーションスキル」も解説している。
クレームは信頼をより強固なものとしてもらうためのチャンスと捉えており、望ましい対応のための5つのステップ、心構えのチェックリストも掲載している。
「基本的なことだし、自分には大丈夫」と思っていても、読み進めるうちにおろそかになっていたことを発見するかもしれない。
また、「なるほど、こういう言い回しがあったのか」と感じる部分も多いのではないだろうか。
この本は、いわば介護接遇マニュアル。
介護の初心者はもちろん、ベテランの人にも役立つ内容で、職場の介護研修、接遇研修の参考にもなりそうだ。
新人教育のツールとして、職場に一冊置いてみてもいいかもしれない。
<松原圭子>
著者プロフィール
山岡 仁美(やまおか・ひとみ)さん
人財育成コンサルタント、株式会社グロウス・カンパニー+代表取締役。
1,000社ほどのコンサルに携わった後、独立。
総合コンサルティング会社では、福祉事業に特化した人材育成開発部の立ち上げから部門長を経験し、全国社会福祉協議会福祉従事者キャリアパス構築委員の経歴も持つ。