介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
ひろみさん(障害者施設 3年目 介護職 27歳)
以前も同じ介護業界で働き、経験豊富な30歳の男性Aさんが最近転職してきました。
以前の施設は「ホスピタリティあふれる」介護をしていたらしく、Aさんはことあるごとにうちの施設のやり方を批判しています。「利用者さんの気持ちを考えていない」「もっと専門的に…」と言っています。
私はこの施設でしか働いたことがないし、自分なりにとにかく毎日必死に試行錯誤しながら、ご利用者さんのことを考えて頑張ってきましたが、そのやり方がおかしいと言われるとムッと来ます。
そんなに前の施設が良かったのなら、転職しなければよかったのにとも思います。
同じ現場の職員なので、仲良くしたいと思いますが、なんだか受け入れられない自分もいます。
どうしたら良いでしょうか?
篠さんからのアドバイス
ひろみさん、日々のお仕事本当にお疲れ様です。
ひろみさんのお気持ち痛いほどわかります。確かに新しい方が入って来て、状況もわからずに、あれこれ言われると頭に来ることもありますよね。
「うちの施設のことをまだよく知らないのに、何がわかるんですか!」と思いたくなるお気持ちわかります。施設のやり方は、これまでの歴史や人間関係があって作られてきたわけで、新しいやり方が良いかといったらそうでない場合もあります。
「郷に入っては郷に従え」とあるように「まず現場の状況をよくみてから、意見を言ってほしい」と私も思います。
さまざまな経験を積んでいる方は「郷に入っては郷に従え」を分かっている場合が多く、まずその施設のやり方を学ぶと思います。Aさんのように「ああだこうだ」とすぐ文句をいう場合、少し心に余裕がないのかもしれません。
この施設のやり方がおかしいと思い、イライラしているというだけでなく、
「自分の居場所がない」「自分のことをわかってほしい」「自分の存在を誇示したい」という心理的なプレッシャーがあるからではないでしょうか。
私も4回転職しましたので、転職したてのころの状況や心境はよくわかります。いわばアウェーにいる感じで入ったばかりというのはとても辛い心境です。本当に気持ちに余裕がありませんでした。私は異業種からの転職組で、現場の雰囲気に慣れるのに時間がかかりました。もしかすると、Aさんも同じような心境かもしれませんね。私の場合は、自分の気持ちや存在を受け入れてくれる職員が出来るようになってから、すこし力が抜け、心にも余裕ができてきましたね。
今回のAさんのように現場に文句をいうことで、居場所を作ろうとしているのであれば、ひろみさんだけでなく、周りの職員とも打ち解けるのに時間がかかりますよね。
ひろみさんに「仲良くしたい」という気持ちがあり、悩んでいるということは、ひろみさんは仲間を大事にするとても優しい方なのだと思います。
そんな気持ちがないのなら、きっとこんな悩みを持つことなく「うるさい!」で終わってしまいます。
ひろみさんが無理ない範囲で、Aさんに「ご苦労様」とか「何かあれば言ってくださいね」とか声をかけてあげてみてはいかがでしょう。ポイントは「無理のない範囲で」です。
もしAさんがひろみさんの声かけに対して、「行為をはねのける」対応を取るのであれば、Aさんは周りと協調するのではなく、周りと対立することでモチベーションを上げるタイプなのかもしれません。それはAさんの人間性なので、Aさんが自分で解決していく問題です。ひろみさんの関われる範囲ではないと思いますので温かく見守ってあげましょう。
もしAさんの言動で業務に支障があるならば、上司などに相談してみてください。上司を通して言ってもらうのが、角が立たなくて良いかと思います。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2014/11/27
最終更新日:2019/9/11
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