介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
ゆうきさん(30歳 有料老人ホーム ユニットリーダー)
介護業界未経験の50代の男性がアルバイトで入ってきました。
前職は小売店の店長だったそうで、社会経験が豊富な方です。現場の問題点を分析したり、解決方法を提案してくれたりしるのは有難いのですが、協調性に欠けるときもあります。
他の職員から不満も出ていて、リーダーとして指導しないといけないのですが、年上の方なのでなかなか言いづらいです。どんなコミュニケーションを心がければよいですか?
篠さんからのアドバイス
ゆうきさん、日々のお仕事おつかれさまです。
店長として活躍されてきた方で、しかも父親くらいの年齢。ユニットリーダーのゆうきさんが、どうコミュニケーションをとればよいのかと、戸惑われるのも当然ですね。
そこで、私からのアドバイスは、「話をする時間をつくること」です。
私も、介護の職場で、何人かの年配の男性と仕事をしてきました。どの方も、長年仕事をしてきた「勘」があり、本当に勉強になりました。一緒に仕事をすることで、学べることがたくさんあります。
年配の方々は、いまどきの若者以上に、「人と人とのつながりを大事にする」という印象があります。今と違い、携帯電話やパソコンなどの通信機器を通さずに直接コミュニケーションをとることが多い時代を過ごされていたからかもしれません。
仕事中はじっくり話をする時間をつくることは難しいと思いますので、仕事終わりに喫茶店や飲み屋にお誘いしてみてはいかがでしょうか。いわゆる“飲みニケーション”の機会をつくって、仕事の話だけでなく、いろんな話をするとよいと思います。
私の想像ですが、50代というタイミングで介護の世界に入ることは、それ相当の介護への思いや決意があるのだと思います。まず、その考えを聞いてみるのはいかがでしょうか? その考えは、ゆうきさんをはじめ、施設で働く介護スタッフみんなの刺激になり、新しい気づきを与えてくれるのではと私は思います。
リーダーとして指導をする面では、社会人として多くの経験を積まれ、すでに人間として完成されている方なので、20代と同じように指導・教育するのは、難しいでしょう。
そこで、普段は人生の先輩としてコミュニケーションをとり、仕事をするうえではリーダーとして指導する。このスタンスを念頭において、関係を築いてみてはいかがでしょうか。
いくら年上と言っても、仕事の現場ではゆうきさんがリーダーです。
担当の仕事をしてくれなかったり、協調性に欠ける時は、「◯◯してください」ときちんと伝える必要があります。
施設の雰囲気や職員のこと、利用者の特徴を把握しているのは、ゆうきさんです。年配であるからといって、リーダーとして言うべきことを遠慮していては、チームの不満だけでなく、利用者のクレームにもつながってしまうかもしれません。
ただし、一方的に「◯◯してください」と言うだけではなく、経験豊富な人生の先輩として、どんどん頼りにすることも重要です。リーダーとしての悩みがあれば、こっそり相談してみるのもよいかもしれません。店長の経験から、介護現場でも活かせるアドバイスをもらえるかもしれません。胸を借りられる部分は、どんどん借りてみてはいかがでしょう。小売店の店長として活躍されてきた方なので、慕われれば、きっと親身になって応えてくれると思います。
そんな関係を築いていくためには、ぜひ、積極的に話しをしてください。
もし、それでもなかなかコミュニケーションがとれない、相手が指導を聞いてくれないのであれば、その環境にふさわしくないという判断をすべきかもしれません。
今回、年配の男性と上手くコミュニケーションをとりながら指導をしていくことは、ゆうきさんのリーダーとしての幅を大きく広げることになると思います。応援しています!
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2015/4/16
最終更新日:2020/1/28