介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
かつのりさん(有料老人ホーム 14 年目 38歳)
以前から希望していた新規オープンの施設に異動できることになりました。しかも管理職に昇進。忙しい日々ですが、やりがいがあり、着実にキャリアアップ。プライベートでも結婚が決まりいろんな面で順調。ですが、なんだか気持ちがどんより暗くて重いです…。
新しい職場のそばに引っ越すのも楽しみしていたのですが、準備も億劫で仕事にも身が入りません。この気持ち、なんなのでしょうか?
篠さんからのアドバイス
かつのりさん、日々のお仕事本当にお疲れ様です。
ストレスとなるのは、「苦手な人間関係」など負の要因だけではないんです。
一見すると、「歓迎されること」「喜ばしいこと」がストレスとなることもあります。「出世」「結婚」「出産」なども同様です。
かつのりさんも、「出世」「結婚」など喜ばしいことが続き、自分が気づかないところでプレッシャーやストレスになっていることが考えられます。
もしかすると、現在は、「軽いうつ状態」かもしれません。
「うつ」は、「心の風邪」と呼ばれ、誰もがなる可能性があります。間違った常識として「根性がない」「気持ちが弱い」「さぼっている」等の偏見がありますが、まったくそうではありません。
むしろ「まじめな方」「几帳面な方」「責任感の強い方」の方がうつになりやすいとも言われます。風邪はこじらすと肺炎などの重大な病気に進行するように、うつも早めの適切な治療が必要です。2週間以上同じ状態が続いていたり、何かおかしいと思うのであれば医療機関を受診してください。
かつのりさんも、この状態が続いているようであれば、きちんと医療機関にかかることをおすすめします。
そして、
もし「うつ」と診断された場合は、まず「休むこと」が大事です。会社や上司に申し出て、休みをもらうことを願い出てほしいです。
「現場から抜けられない」「上司が良い顔をしない」「周りの職員に迷惑がかかる」という理由で、休みにくいのはわかります。しかし、勇気を持って申し出て欲しいと思います。
休むということを選択するには「勇気」が必要です。しかし、「迷惑かけてはいけない」と思い、無理してがんばって体や心を壊しては、かえって長い治療が必要になり、余計に迷惑をかけてしまいます。
しっかり休みをとって、適切な治療をすれば回復していくでしょう。
それでも、
どうしても休めないのであれば、「頑張らない」ことが大事です。
上司や同僚に打ち明けて、休憩時間を長くしてもらうとか、半休を利用するなど、「頑張らない」ようにしてください。
上司や同僚にカッコ悪いし、良い顔をされないと思うかもしれません。しかし、うつの場合は、「休むこと」「がんばらないこと」が治療です。長い目で見れば、自分のためだけでなく、同僚や家族のためにもなると、考えてください。
もし、上司や同僚に迷惑をかけることがある場合は、菓子折りを持っていく等の気配りや感謝の気持ちを伝えれば、きっと理解してもらえるはずです。
うつの時は、周りの人に気を使うことより、自分の治療や回復に集中することこそ大切なのです。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2015/4/23
最終更新日:2020/2/4