■書名:聖路加国際病院の愛情健康レシピ
■著者:聖路加国際病院
■発行元:永岡書店
■発行年月:2012年6月15日
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介護現場で活用したくなる!聖路加国際病院のレシピを紹介
介護の仕事のなかには、料理をしたり、食事のメニューを考えたりすることが必要な場合がある。
例えば、生活介助として調理を行う訪問ヘルパーや、認知症の入居者と一緒に食事を作ることがあるグループホームのスタッフには、そのスキルが必要だ。
利用者の健康を気遣いながら、しかも美味しく食べてもらうとなると、毎回レシピを考えるのはなかなか大変だろう。今回は、そんな介護職の参考になるレシピ本を紹介。
本書に載っているのは、「病院食」のレシピだ。入院中の患者に提供される病院食というと、健康を意識したものが多いことから、低カロリーで味付けは薄く、そっけないものを想像するかもしれない。
そのようなイメージで本書をめくると、その豊かな献立内容に驚くはずだ。色鮮やかに盛り付けられた料理の中には、病院食のイメージとはほど遠い「チキンカツ」「天ぷら」「ユーリンチー(唐揚げ)」といった揚げ物も並んでいる。
聖路加国際病院は、明治35年創設の総合病院。創立当時から多くの外国人も利用していた国際病院であるため、入院病棟では早くから洋食メニューを取り入れていたという。明治時代から、家庭の食卓に並ぶことは珍しかった「サラダ」「洋風スープの煮物」といったメニューも病院食として提供していたというから驚きだ。
本書では、聖路加国際病院が入院患者に提供している料理を、家庭で作りやすいようアレンジしたレシピを紹介している。国際色豊かな料理でありつつ、必要な栄養素がまんべんなく摂れ、適切な塩分、カロリーに配慮したものとなっている。患者からも好評で、退院したあとの食事作りの参考にしたいと毎日の食事を書き留める人や、「レシピを知りたい」という声も多く寄せられていたという。持病を持つグループホームの入居者や、退院したばかりの訪問介護の利用者の食事としても活用できそうだ。
本書では、30日分の「健康を作るための食事」を紹介。たとえば下記のようなメニューがある。
●プルコギ風焼き肉
●ハッシュドビーフ
●イタリア風ミートボール
●帆立の和風グラタン
●チキンカツ
高カロリーの代表格である焼き肉やカツなどの料理名を見ると、「これで病院食なんて、大丈夫なの?」と心配になりそうだが、すべて1食500kcal台。きちんとカロリーを抑えるコツなども紹介されている。そのほか、同院自慢のレシピで患者からも人気が高いという「鶏のハーブパン粉焼き」のレシピも紹介。また、「八宝菜」に「酢豚」といった中華、「ムニエル」に「シチュー」などおなじみの洋食も登場する。
和食メニューも「ぶりの照り焼き定食」「炒り鶏献立」「さばのみそ煮献立」など充実。体によいとされる魚も、さば、ぶり、たら、鮭、すずきなど、さまざまな種類を取り上げているのも印象的だ。
献立は、主菜だけではなく、副菜、汁物というセットで紹介されているため、カロリーや塩分の計算もしやすい。材料や調味料も特別なものではなく、どこにでも手に入る身近なものばかり。介護職が、決められた予算内や、利用者の冷蔵庫にある材料で食事を作るときにも役立つレシピだ。
また、油や塩分を抑えるコツ、栄養バランスのよい献立作りのコツ、ボリュームたっぷりに見せる盛り付け方なども紹介している。
<入院中の患者さんの病状に合わせながら、必要な栄養がとれて、さらに、食事が楽しみや満足につながるようにと、心をこめ、配慮した食事をお出ししています(中略)。同院のレシピを参考にすることで健康によく、心を満足させる食事を召し上がって頂ければ幸せです。それが病気の予防につながってほしいと願っています>
巻頭では、同院の理事長である日野原重明氏のインタビュー記事が掲載。「健やかに生きるための食事」「生涯現役の真髄」について語っている。続いて「発酵食品をとる」「大豆や青菜を食べる」「野菜や海草、きのこから食べ始める」といった家庭でできる健康な体を作る13か条も紹介されている。
介護職の調理や献立作りに役立つ健康レシピの紹介だけではなく、利用者の健康に役立てられる情報も多い。介護の仕事に役立ち、また利用者のニーズにも応えられる読みごたえのある一冊だ。
<松原圭子>
著者プロフィール
聖路加国際病院(せいろかこくさいびょういん)
1902年(明治35年)に創設。医療の質の高さはもちろん、院内の環境やホスピタリティ面の充実にも力を入れており、入院患者を対象に行った調査では、97%が「満足した」と回答するなど、高い評価を得ている。