■書名:介護がラクになる「たったひとつ」の方法
■著者:小山敬子
■発行元:サンマーク出版
■発行年月:2011年9月30日
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介護する側もされる側もラクになるために、なにが大切かを考えよう
がんばって介護の仕事に取り組んでいるけれど、働く喜びやモチベーションを見いだせない。自分のがんばりが空回りしている気がして、このままでは介護という仕事がつらくなりそう……。そんなとき、ぜひ本書を手にとってほしい。
著者の小山敬子さんは、自身が理事長を務める介護老人保健施設とデイサービス「おとなの学校」で、「授業」という形を取り入れた高齢者ケアを実践。そこでの体験と成果を基にしたノウハウが紹介されている。
実のところ、介護はけっしてラクな仕事ではないはず。だが著者は、ラクになる方法があると言う。介護をする側も、介護をされる側も、どちらもラクに、幸せになるための方法だ。その「たったひとつ」の方法とは、介護される利用者ご本人の「意欲」を引き出すこと。それができれば、介護は大きく変わると本書では説かれている。
<自分でできる喜びや、目標の存在が「やる気スイッチ」をオンにする。それに気づけば、介護のあり方は激変するのです。その方の体がどんどん動くようになってきますし、支援(介護)するほうも心身共にラクになってきます。>
大事なのは、心身共にラクになるという点。前向きに生きる利用者と向き合えば、合わせ鏡のように、介護する側も自然と意欲がわいてくる。働くモチベーションが生まれ、体だけでなく、心もラクになるというわけだ。本書でも「おとなの学校」での事例が紹介されているが、実体験として思い当たる人も多いのではないだろうか。
本書ではさらに、どうすれば意欲を引き出せるか、という具体的な仕掛けについても紹介されている。しかし、著者がもっとも伝えたい部分は、実はそうした対処法そのものではなく、意欲を引き出す前提として、高齢者も私たちと同じ「人」なのだと再確認することの大事さだろう。
著者のこんな言葉が印象的だ。
<たとえ体は寝たきりで、自分の力では立ちあがることができない状態であっても、心は立つことができます。>
<介護生活の主役は介護者ではありません。高齢者本人なのです。脇役であるあなたががんばりすぎる必要はありません。あなたの役割は、主役ががんばれるよう、どう支援するかなのです。>
介護スタッフががんばりすぎてもダメなのだ。あらためて振り返ると、どうだろうか。あなたはがんばりすぎていなかっただろうか? 仕事がつらかったのは、がんばりすぎて過介護になっていたからではないだろうか。
めざすべきは、高齢者の意欲を引き出し、本人に“ちょっとがんばってもらう介護”。それが、双方の心を明るくすると言う。そのために何が必要かを自分自身で考える糸口として、本書を利用してはいかがだろうか。
<小田>
著者プロフィール
小山敬子(こやまけいこ)さん
久留米大学医学部を卒業後、熊本大学大学院医学研究科博士課程修了。医療法人社団大浦会を中心とした医療・介護・福祉共同体の「ピュア・サポートグループ」代表。理事長を務める介護老人保健施設とデイサービス「おとなの学校」は、学校形式の授業を取り入れたケアとして雑誌等で反響を呼び、現在は地元熊本のほか、関東や近畿などでも展開中。著書に『夢見る老人介護』『なぜ、「回想法」が認知症に効くのか』がある。