■書名:スーパー嫁の汗と笑いの在宅介護
■著者:バニラファッジ
■発行元:主婦と生活社
■発行年月:2013年12月16日
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爆笑、そしてホロリ…。姑シスターズと嫁の在宅介護漫画エッセイ
本書は、要介護4で認知症の姑と、要介護5で身体が不自由なその妹、その二人の介護に奮闘する嫁の日常をユーモアたっぷりに、4コマ漫画のようなスタイルで描いている。思わず吹き出したあとに心が温かくなったり、考えさせられたりする介護漫画エッセイだ。
定年まで市役所に勤めながら、シングルマザーで一人息子を育て上げた義母は、嫁に厳しく、かなりの頑固者。認知症が進行しているものの、毒舌は冴え、体はいたって元気だ。その妹(おばさん)は独身のまま、幼稚園教諭として定年まで働き、姉の子育てを支えてきた。リウマチが悪化したため車椅子生活だが、こちらの頭はしっかり。三度の飯よりアイドルの「嵐」、特にマツジュンが大好きという永遠の乙女キャラ。
この個性豊かな二人を在宅介護しているのが、著者のファッジさん(ファッジは愛称)。物忘れが加速した義母がしでかす様々なトラブルに振り回され、おばさんの身体が徐々に弱くなる…。現実には重くなりがちなエピソードも、鋭いツッコミや、ちょっぴり鬼嫁な会話で笑いを誘う。
嫁という立場では、さぞかしストレスがたまる日々だろうと想像するが、本書は明るく、笑いがいっぱい。もちろん、時には同じ会話の繰り返しにウンザリしたり、懲らしめようとちょっと意地悪して直後に猛省したり…、そんなリアルな気持ちが綴られる。介護に携る人なら、「あるある」という場面が満載だろう。
本書の魅力は、楽しいエピソードや、思わずクスリと笑える本音の数々だけではない。エピソードのベースには、介護される側の気持ちを推し量り、寄り添おうとする著者のアプローチがある。そこに多くの読者が共感するのではないだろうか。
たとえば、著者は、認知症が発症している時の義母を、羽が生えて自由奔放な「フェアリー」と呼ぶ。
「やだわ、すぐ忘れちゃう。もう自分が何をしでかすかわからなくなってくるわ…」とぼやく義母に、「お義母さんが忘れても私が覚えているから大丈夫ですよ。安心してください。」と声をかけ、「フェアリー100%の時は難しいが、お義母さんに自覚症状がある時を見つけてグーンと信頼関係を築きたいと思う。」と綴る。
<何度も同じことを聞かれる。仕方ないと思うがついイライラしてしまうこともたびたび。
で、変化球。
聞かれる前に、言ってみた。
うん、この方が自分も気分がいい。>
著者は、在宅介護をするにあたって訪問ヘルパーやデイサービス、ショートステイなど様々なサービスを利用。もちろん夫や三人の子どもたちの協力もある。認知症の義母の見守りは、おばさんが担う。
<おそらく1対1だと参ってしまうが1対2なら、笑っていられる。
さらにこっちの人数が多ければ、笑える範囲が広がると思う。
介護はみんなでやる方が楽しいかも。>
本書には、たくさんのコミュニケーションのヒントが詰まっている。読んでいると、難しいと考えがちな認知症介護も、自然と肩の力を抜いて考えられるから不思議だ。介護に携わることで得られる温かい交流や喜びも伝わってくる。
介護に携わる人に、大切なヒントと勇気を与えてくれる一冊だ。
<小田>
著者プロフィール
バニラファッジ さん
本書の元となった、人気ブログ「7人家族の真ん中で。」の管理人。ブログでは、二男一女の子育てと在宅介護のエピソードをユーモラスに綴る。総アクセス2億を超える人気ブログで、現在も継続中。しかし残念ながら、本書でイキイキと毒舌を吐き、嫁を困らせていたお義母さんとおばさんは、2015年末と2016年6月に相次いで亡くなっている。