シナプソロジーは、子どもからお年寄りまで楽しめ、座ったままで出来るプログラムもあるので、体力レベルに問わず行えます。運動・知的刺激・社会交流により、脳を刺激し活性化。認知症予防や、健康増進に役立つことも期待される、高齢者にもぴったりなプログラムです。介護事業所や施設で取り入れているところも増えています。
このコーナーでは、「あらら、間違って正解!」「おやおや、戸惑って大正解!」と楽しめる、魅力満点のシナプソロジーをご紹介!シナプソロジーインストラクターのふーちゃんこと、介護福祉士の山﨑史香さんに、介護施設や、デイサービスなどで楽しめるプログラムを教えてもらいます。
軽度認知症、麻痺のある人も楽しめる「スカーフキャッチ花と野菜」のアレンジをやってみよう
みなさん、こんにちは!今日も元気にシナプソロジーインストラクターのふーちゃんです。
前回に引き続き、
「スカーフキャッチ花と野菜」というプログラムをご紹介します。前回は元気なお年寄り向けでしたが、今回は
軽度認知症、麻痺のある人も楽しめる声がけのポイントをお伝えします。
スカーフをキャッチすることに集中してしまうと、バランスを崩したり、前のめりになっての転倒事故の可能性も。そうならないためのポイントもお伝えします。判断力・注意力・言語能力・空間認知機能・手先の器用さを鍛えられるプログラムですので、頭も身体もぽかぽかにしていきましょう。
【1】まず、以下の基本動作を覚えましょう!
基本動作
スカーフを用意し、2人組で向き合って丸めたスカーフを投げ合います。
立って出来る場合は2~3メートル、座って行うときは1~2メートル離れて、丸めたスカーフを相手に届くように、優しく投げます。
投げる人が
「右」か「左」の指示を言ってから投げたら、受け取る人は、
「右」との指示の声で → 右脚を出して右手でキャッチ
「左」との指示の声で → 左脚を出して左手でキャッチ
します。
麻痺や体を動かしにくい人、視野が狭く空間認知能力が低い人への指導ポイント
まず、認識しやすく、掴みやすくするために、赤や青など色彩がハッキリした色の風船や、柔らかいビーズクッションのような、少し大きめのものを使ってみましょう。2人組で向き合って、片手どちらかの手で、丸めたスカーフ(または別のもの)を投げ合います。1~2メートル離れて座り、丸めたスカーフを相手に届くように優しく投げます。数回練習してもらいましょう。
投げる人は「花」か「野菜」と言います。
キャッチする人は、「花」なら「赤」と言いながらキャッチする。「野菜」なら「みどり」と言いながらキャッチする。※両手が動かないと出来ない!と決めつけているのは介護者側の偏った見方の場合があります。片手、片足では参加出来ないだろうと、参加者メンバーに入れないという選択ではなく、その方の出来る事にフォーカスしてみてくださいね。中には片麻痺だからと参加を諦めている方もいると思います。その方に添った声がけをしながら、脳を活性化させるには麻痺があってもできることを伝えてください。
軽度~中度認知症状がある人への指導ポイント
新しい事を覚えるのが苦手な方に対しては、参加意欲を損なわない声がけ、内容の変更が必要です。
基本動作は一人で行います。両手でスカーフを上に投げてキャッチする。数回練習してもらいましょう。
※注意事項※
スカーフをキャッチすることに集中しすぎて、車イスや椅子から乗り出しての転倒や、落ちたスカーフを拾おうとしての転倒も考えられるので、サポートするスタッフは通常より2人ほど多くすると良いでしょう。安全を確保し、目配りしながら行いましょう。
【2】基本の動作を覚えたら、みんなで実践してみよう!
動作を覚えたら、いよいよシナプソロジーがスタート!
●指示者の声がけ
「まずはパートナーの顔を見て、笑顔でご挨拶と握手をしましょう。では、手元にお配りしたスカーフを使って、まずは5回ほどキャッチボールをします。1~2メートル離れましょう。投げるときは下から上に優しく、相手のとれる位置に投げましょう。」
「では、どちらが先に投げるのかを決めましょう。」
※1分ほど、決まるまで待ちましょう。ここで参加者同士のコミュニケーションを促します。
「投げる人が、「右」か「左」のどちらかを言います。
それを聞いて、受け取る人は「右」と言われたら「右!」と声に出しながら、右手と右足を同時に前に出し、右手でキャッチ。
「左」と言われたら「左!」と声に出しながら、左手と左足を同時に前に出し、左手でキャッチをします。
手と足と、声を出してやってみましょう。」
※ゆっくり説明をしながら、職員が動作を見せる。
【3】新しい刺激をチャージ!スパイスアップ 初級編
次はスパイスアップ(新しい変化)です。
手の動きはそのままで、
前に出す脚を左右逆にします。
「右」と言われたら
「右!」と声に出しながら、右手と
左足を同時に前に出し、右手でキャッチ
「左」と言われたら
「左!」と声に出しながら、左手と
右足を同時に前に出し、左手でキャッチ
基本動作同様に、次の動作の指示を出すときは周りの状況をしっかり把握し、参加者が落ち着いてから次に移りましょう。
※盛り上がりすぎて次の指示が出せなくなることもあるので、間を置いてから指示者は話しましょう。がやがやし過ぎていると指示が伝わりませんし、混乱をさせてしまう可能性があります。
麻痺や体を動かしにくい人、視野が狭く空間認知能力が低い人への指導ポイント
スパイスアップ初級編は、色から名前に変える
投げる人は「花」か「野菜」と言います。キャッチする人は「花」なら「花の名前」を言いながらキャッチする。「野菜」なら「野菜の名前」を言いながらキャッチする。
軽度~中度認知症状がある人への指導ポイント
指示者が「花」か「野菜」と言ったら、キャッチするときに「花」なら「花の名前」、「野菜」なら「野菜」の名前を答えてもらう。
はじめのうちは、スタッフの動作をすべてマネしてしまう場合があるかもしれません。サポートに他のスタッフに入ってもらい、基本動作を覚えてもらいましょう。参加される方の中に認知症の方が多くいる場合はサポートのスタッフを増やし、こまめに声かけをしながら一緒にやってみてくださいね。例えば、冬と夏に関係するものを答えるなど、アレンジも出来ます。参加者の昔の職業や、生活歴に関係ある項目にすると回想法にもなりますのでいろいろ試してやってみてくださいね。
ふーちゃんのワンポイントアドバイス
笑いながら、脳が混乱して間違える事を「みんなで楽しむ事」が大切です。
慣れてきたら、「脳の活性化プログラムである事」を意識して、行っていけば良いと思います。一度、スタッフ同士でやって難易度を確認してから、参加者のレベルに合わせてアレンジしてみましょう。なお、軽度認知症には個人差があります。初めてプログラムを進行する場合は、指示者のサポート役にもう1人加え、2人で進行できるとベター。様子を見て、フォローしながら進めていけるとよいと思います。
次週は、新しいプログラムを紹介します。
【スカーフキャッチ花と野菜動画】を動画で見る
<シナプソロジーについて>
→シナプソロジーの特徴と効果とは?
→「スカーフキャッチ花と野菜」元気なお年寄り向けのアレンジはこちら
プロフィール
ふーちゃん こと 山崎史香(やまざき・ふみか)
キャリア11年の介護福祉士。現場で介護職員として働くかたわら、子供や若者達が触れやすい介護の新しい入り口作りを目指し、「介護イノベーションART」など施設を離れた活動も積極的に行う。地域、現場から発信するスタイルの介護福祉士として、注目の存在。電子書籍絵本
『しわのようせい』の作者でもある。
そのほかの活動として主なものは、寝たきりの方の見ている白い天井の景色をARTで変える「花咲かじーさんプロジェクト」、子供達へのシワ物語り「介護授業」、4度目のハタチを謳歌する為の「介護予防サロン」を開催。今までの活動が、目に止まり、宮城県仙台市のケアヒーローに選ばれる。また、福祉事業、介護の魅力を伝えるプロモーション、パンフレット、雑誌等にも出演している。
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