■書名:オールカラー 介護に役立つ! 写真でわかる拘縮ケア
■監修:田中 義行
■出版社:ナツメ社
■発行年月:2016年9月
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拘縮ケアの実技が一目でわかる一冊。拘縮の理解を深めながら論理的に習得
寝たきりで過ごすうちに筋肉が縮んだり、病気で体の動きが制限されたりするために、関節が固まって動かしにくくなる「拘縮(こうしゅく)」。
拘縮をどう対応するのかは、すべての高齢者介護の基本の一つだ。
本書は、拘縮についての基本的な知識と具体的なケアの方法について、わかりやすく詳細に解説した一冊となっている。
写真や図がふんだんに使われ、介護初心者にも理解しやすい誌面が特長で、次の5つのパートからなっている。
Part 1 拘縮ケアは、正しい姿勢から
Part 2 [実践! 拘縮ケア1] ベッドでの適切な姿勢をつくる
Part 3 [実践! 拘縮ケア2] 椅子での適切な姿勢をつくる
Part 4 [実践! 拘縮ケア3] 拘縮部を無理なく動かす
Part 5 生活場面の負担を減らす
監修者の理学療法士・田中義行さんは、「拘縮ケアには論理的根拠が重要」と考えている。
そのためPart 1では、拘縮ケアの実技指導に入る前に、拘縮の原因とケアの根拠について、ていねいな解説がされている。
写真を多く使っているので、専門的な内容も視覚的に理解でき、拘縮について無理なく学ぶことができるのがうれしい。
このほかにPart 1では、多くのページを使って「ケアの注意点」を説明している。
“「自分だったら」はNG。障害者目線のケアを” “寝たきりの人でも介助前には必ず声がけを”などのように、介護者として大切な接し方の基本についても書かれている。
写真や図が中心の実践マニュアルのような本書だが、介護者がまず最初に知っておくべき知識や心構えについて、わかりやすい形で学ぶことができるのは大きなポイントだろう。
Part 2、3、4では、拘縮ケアの実践的な実技について、詳細な実技指導が展開されている。
大小さまざまな写真をふんだんに使用したオールカラーの見やすい誌面は、本が苦手だという人でも、抜群にとっつきやすい。
監修者の田中義行さん自身が、それぞれのシーンで必要な実技を実演しているので、正確さが求められる動きについても、理解しやすく安心感が大きい。
やってしまいがちなNG例を多く載せていることも、同書の特長の一つ。
経験の少ない介護初心者でも、正しい例とNG例との違いを写真ではっきり確認できるので、気をつけるべきポイントが直感的に頭に入ってくる。
写真に添えられた説明文も、実践のプロならではのわかりやすさだ。
内容的にも、「なぜそうなるのか」「なぜその動きが必要なのか」といった「ケアの根拠」が書かれているので、それぞれのケアについて深く理解しながら学んでいける。
介護の仕事がはじめての人でもわかりやすく、すぐに役立つことを目指した本書だが、すでに介護の仕事をしているベテランにも、ぜひ手に取ってもらいたい一冊だ。
基本に立ち返って本書に向き合えば、ケアの実技においても拘縮の知識においても得るものが多く、ステップアップにつなげられそうだ。
監修者プロフィール
田中 義行(たなか・よしゆき)さん
理学療法士。株式会社大起エンゼルヘルプ所属。上川病院勤務、江戸川医療専門学校(現東京リハビリテーション専門学校)講師、介護老人保健施設 港南あおぞら勤務を経て、現職に至る。認知症患者の身体拘束廃止活動を原点とし、現在は、障害者の身体構造・生理にかなったわかりやすい介護技術、拘縮を防ぐ介護技術を全国の研修会、講演会で伝えている。
著書・監修書に『写真で学ぶ 拘縮予防・改善のための介護』『介助が困難な人への介護技術』『潜在力を引き出す介助 あなたの介護を劇的に変える新しい技術』(中央法規出版)、『現場で使えるケアマネのリハビリ知識便利帖』(翔泳社)などがある。