■書名:転倒予防のすべてがわかる本
■著者:松本 健史
■出版社:講談社
■発行年月:2018年7月
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生活リハビリのプロが教える転倒予防のポイントは、環境づくりと体づくり!
高齢者は加齢や病気のために転びやすい。
若い人なら些細なことで済むが、高齢者にとっては大事に至ってしまうのが「転倒」だ。
転倒して骨折し、寝たきりになって、認知症を発症という最悪の事態にまで発展しかねない。たった一度の転倒がその後の生活を激変させることにもなる。
介護従事者なら誰もが転倒の恐ろしさを知っており、予防対策の必要性を強く感じているはずだ。
滑りやすい靴は履かせないとか、階段では介助が必要とか、予防策として思いつくことはあるだろうが、決して万全ではない。そんなときに役に立つのが本書だ。
タイトルどおり転倒予防のすべてがわかる。まさに“転ばぬ先の杖”ならぬ“転ばぬ先の本”である。
筆者の松本さんは、介護現場で10年以上「生活リハビリ(生活の中でできるリハビリ)」に携わってきた理学療法士だ。
本書は、直立二足歩行をするヒトは転倒しやすいものとして捉え、予防一点張りでがんじがらめにするのではなく、転倒しても大事にならないような工夫をして無理のない生活を送ることを目的としている。
<私たちはいつも転倒のリスクと隣り合わせで生活しているといっても過言ではありません。転倒は起こらないにこしたことはないのですが、完全にゼロにはできないのも事実です。「なにがなんでも転倒事故を防ごう」として、高齢者を寝かせきりにしてしまう施設もあります。その結果、どんどん生気をなくしたような目になる人を何人も見てきました。「ヒトは転倒するもの」と少しゆるく構え、いろんな工夫をして転倒を減らす、あるいは転倒してもケガをしない、そんな環境づくりと体づくりが、これからの介護には必要だと思います。>
本書の構成は次のとおり。
第1章 高齢者はなぜ転ぶのか?
第2章 転びそうな高齢者の見分け方――内的要因を知る
第3章 転ばない環境をつくろう――外的要因の排除・突発的要因への対処
第4章 転倒させない介助術
第5章 転倒しない体づくりをしよう
目次には、各章の内容が一目でわかるように細かい項目が載っており、気になる部分がすぐ読めるようになっている。また全編を通して、図やイラストが豊富でわかりやすい作りだ。
転びにくい環境づくりの項目では、環境のチェックリストがあったり、転倒の突発的要因の原因・対処法が一覧になっていたりと具体的で参考にしやすい。
いたるところにコラムもあり、転倒に関連するさまざまな知識がちりばめられている。
介護士・看護師向けではあるものの、介護をしている家族にもわかるように書かれているので、専門書とは違って手軽に参考にできる。
介助術についても、「いかに本人の力を引き出し、体力を低下させないか」という視点を大切にして、良い介助とダメな介助の違いをていねいに解説している。
先回りしすぎの介助は、高齢者自身の持っている能力や体力を衰えさせてしまい、転倒につながりかねない。その違いをしっかり身に付けることができるだろう。
転倒を防ぐということは、高齢者それぞれの体調や状態を理解し、その人が持っている能力・体力に合わせて快適に生活できる環境を整えることから始まるといえるのではないかと思えてくる。
今一度、介護されている高齢者の方たち一人ひとりを知る手掛かりとして、本書を参考にされてはいかがだろうか。
著者プロフィール
松本 健史(まつもと・たけふみ)さん
1972年大阪府生まれ。合同会社松本リハビリ研究所所長。理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など、介護福祉に関わる多方面で活躍中。研修を受けると高齢者が元気になる、介護職が生活リハビリの達人になれると話題。「介護は工夫の宝箱!」が持論。