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2017年08月25日

『認知症ケアとしてのレクリエーションのデザイン』 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

■書名:認知症ケアとしてのレクリエーションのデザイン
■著者:土井 輝子・桑原 教彰
■出版社:ユニオンプレス
■発行年月:2017年4月

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認知症を持つ人を尊重した「認知症ケアのレクリエーション」とは?

日本の人口は2008年に1億2808万人となり、それをピークに減少し、今後100年内に1900年頃の人口に戻るといわれている。
人口減少に伴って総人口に占める65歳以上の割合は高まり、いわゆる団塊の世代が後期高齢者となるのは2025年。それは、認知症を患う高齢者も増加することを意味しており、認知症介護の重要性が今以上に高まることだろう。
よりよい認知症ケアの在り方としてレクリエーションの活用を挙げ、実際に行った結果をまとめたのが本書である。

本書では、まず認知症介護をとりまく現状をざっと確認。認知症の方々の尊厳への配慮が欠けていることを指摘し、パーソン・センタード・ケアを推奨している。
これは、認知症を持つ人を一人の「人」として尊重し、その人の視点や立場に立って理解し、ケアを行うことが大切とする考え方である。

また、認知症になった人は、記憶障害から過去を失い、未来が消滅し現在がなくなると感じていることがあるかもしれない。
それは自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛「スピリチュアルペイン」であり、その苦痛を軽減することこそが認知症介護の理念だと述べられている。

<認知症高齢者グループホームでは認知症ケアに特化してさまざまな仕掛けを駆使し、「認知症」の人ではなく、認知症の「人」として自分らしく笑顔ある毎日を送って貰うことを目的とする。本研究では、人が人として尊重しあうという倫理的な考え、及び認知症高齢者のスピリチュアルペインをケアするパーソン・センタード・ケアという考えに基づき、施設でのQOLを向上させると共に、施設介護スタッフの職務満足度も向上することのできるレクリエーションをデザインする方法論の確立を目的とした実証研究を行った。>

本書で紹介されているのは、茶道、華道、メディアセラピー、ロボットを用いたレクリエーション。
それぞれに目的、検証方法(企画・参加者・計測方法)、効果、まとめが掲載されている。どれも図表や写真を使っているので、わかりやすい。

日本の伝統文化である茶道や華道は、若い頃に花嫁修業として学んだことがある方も多く、受け入れやすいという。
茶道では「一期一会」の言葉通り、人と人とが出会い、お互いを理解しようとする場が作られることで、他者との関係を失うという認知症患者の不安をケアすることができたという。
そして華道では、生花と向き合い集中して「花を活ける」ことをやり遂げることで、情緒が安定し自己肯定感が得られたそうだ。

またメディアセラピーでは、介護施設の入居者と家族、介護スタッフが集まり、スクリーンに投影された入居者の思い出の写真を見ながら生活歴を振り返り、自由に会話をする。
入居者はかつての社会との繋がりを、家族は入居者への感謝や愛情を再確認し、介護スタッフは入居者への尊敬の念を得ることができる。そこから3者間の新たな関係性を築き、入居者のQOLの向上とスタッフの提供する介護の質を上げることができると紹介。

そしてロボットを用いたレクリエーションは、コミュニケーションロボットと入居者とをコミュニケーションさせることで、介護スタッフのレクリエーションに対する負担感の軽減に効果的という結果がでているという。

身体機能のリハビリや余暇として、体操やゲームなどがレクリエーションとしては一般的だが、入居者にとってはありきたりで、介護スタッフから子ども扱いされていると感じることもあり、不評なケースも少なくないという。
また、スタッフにとっては内容がマンネリ化して負担感も大きい。本書で紹介されたものは、認知症介護ケアの理念を伴った新たなレクリエーションとして大いに参考になるものではないだろうか。


著者プロフィール

土井 輝子(どい・てるこ)さん
1981年、神戸女学院大学文学部卒業。2017年、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研研究科博士後期課程修了、博士(先端ファイブロ化学専攻)。1999年、土井医院開業。医療と介護の協同により全ての人の笑顔ある毎日、自分らしい生活の実現を目指し、有限会社ティー・エム・メディカルサービス設立。小規模多機能型居宅介護、グループホームを運営。2017年、株式会社土井輝子研究所設立、代表取締役として現在に至る。株式会社ティー・エム・メディカルサービス顧問。京都セラピードッグクラブ代表。

桑原 教彰(くわはら・のりあき)さん
1987年、東京大学工学部精密機械工学科卒業。同年、住友電気工業株式会社、研究員。1993年、国際電気通信基礎技術研究所、研究員。1996年、東京大学で博士(工学)の学位授与(論文博士)。2002年、国際電気通信基礎技術研究所、主任研究員、2007年、京都工芸繊維大学、准教授。20016年、京都工芸繊維大学、教授。2002年より、認知症の方の日常生活を情報通信技術で支援する研究に従事している。

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