■書名:医療・介護に携わる君たちへ
■著者:斉藤 正身
■出版社:幻冬舎
■発行年月:2017年11月
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介護・医療の現場で不安や悩みを抱えるあなたへ伝えたいメッセージ
不満や不安に悩まされながら働く医療職・介護職に向けて、解決のヒントになりそうなメッセージがつまった一冊。日々の仕事で感じるモヤモヤを晴らすきっかけが見つかるかもしれない。
著者は、医師として患者さんと向き合いながら、同時に多くのスタッフをかかえる医療・社会福祉法人の理事長でもある。
スタッフから多くの相談を受ける中で、がんばっているのに満たされない思いや、このままでいいのかという不安を持つ医療職・介護職が多いことを知っている。
また、悩みから逃れるために、今の職場や仕事を辞めてしまおうと考える人も少なくないという。
こうした現実への一つの解決策として、自分自身の経験も織り交ぜながら、医療・介護の仕事について考えてほしいという著者の思いとエールを形にしたのが本書だ。
まず、悩んだときにすすめているのは、「初心に帰ること」。医療・介護の道を志した「原点」を思い出すことだ。
多くの医療職・介護職が、社会や人々に貢献する気持ちを強く持っていたはずなのに、現場の仕事をしていくうちにいつの間にか忘れてしまっているというのだ。
「自分はなぜ今ここで、この仕事をしているのか」を考えてみようと語る。
<もしみなさんが今、自分の現状に満足できていないとしたら「なんのために」仕事をするのかが見えにくくなっているからかもしれません。
たとえば私であれば、「自分を必要としてくれる人のために」仕事をしています。仕事に対するこの原点がしっかり見えているからこそ、日々の仕事に前向きに取り組むことができています。>
たとえば、上司とうまくいかなくて職場を辞めたいと悩む人には、「その上司のために仕事をしているわけではないのだから、それを理由に辞めるのはおかしい」と言う。
本当に大事なのは目の前の患者さん・利用者さんで、彼らのために仕事をしているはずだとアドバイスを送る。
「本当に大事なのは何か」という視点で考えることが重要なのだ。
意欲満々で医療・介護の道を歩みだしたものの、思ったことがやれなかったり、思うとおりの環境ではなかったりしたために、不満を抱えている場合も多いだろう。
そんなときには「やりたいこと探しよりやれること探し」の項目が役立つはずだ。
いったん肩の力を抜いて、こんな言葉に耳を傾けてもよいのではないだろうか。
<世の中はそんなもの。私だって先に述べたようにそう思うことのほうが多かったです。今でも「思うとおりにはいかないよなぁ」と独り言が口を突いて出ることもあります。それでも、そのなかでやりがいや、こんなこともできるんじゃないかと可能性を見いだしたり、自分の居場所を見つけていく。そこが人間らしいことだし「生きてる」ということじゃないのかなと思います。>
最終章では、悩みを越えた先の、医療職・介護職として輝くために大切なことまで語られている。
職業にかかわらず人として心がけたい内容も多い。
やさしい話し言葉で書かれた読みやすい本なので、気軽に手に取ってみるとよいだろう。
著者プロフィール
斉藤 正身(さいとう・まさみ)さん
医療法人真正会・社会福祉法人真寿会 理事長。医師、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、認知症サポート医、社会医学系専門医・指導医。
昭和31年生まれ。帝京大学医学部卒業。埼玉医科大学病院での研修後、医療法人真正会霞ヶ関中央病院に入職。同医局長を経て霞ヶ関南病院病院長に就任。現在に至る。
著書に『ケアマネジメントと組織運営』(メヂカルフレンド社)、『主治医意見書のポイント』(社会保険研究所)、『ケアプランの上手な立て方』(日本実業出版)等がある。