■書名:認知症ポジティブ!脳科学でひもとく笑顔の暮らしとケアのコツ
■著者:山口 晴保
■出版社:協同医書出版社
■発行年月:2019月5月
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「長生きで なれて幸せ 認知症」ポジティブな目線で介護する人もされる人も幸せに!
「何もわからなくなってしまう怖い病気で、絶対になりたくない。」
認知症についてそう思っている人が多くいて、認知症になったら人生おしまいだというのが世間一般の思いではないだろうか。
認知症に対するそうしたネガティブな考え方に真っ向から反論しているのが本書だ。
<「認知症ポジティブ」とは、高齢者の多くが「認知症は絶対なりたくない嫌な病気」というネガティブな気持ちをもっていますが、認知症になるのが不安という生き方よりも、長生きしていればいずれなる公算大なので、なったときは「認知症になれるまで長生きできてよかった」とポジティブに考え、役割や生きがいをもって明るく毎日を過ごすほうが、人生終盤の舞台を楽しめるのではないか、という提案です。>
<筆者の伝えたいことは、物事には何でも二面性があるので、ネガティブな面だけでなくポジティブな面にも目を向けよう、そしてポジティブ感情を育てようということです。ポジティブ感情が育つほど幸福感を育つと信じています。>
筆者の山口さんは、認知症の医療・リハビリテーションの専門家だ。神経内科の臨床医師、理学療法士の教師、特別養護老人ホームでのケアや終末期医療の経験もある。
本書でご自身をへそ曲がりと称しておられるが、多様な経験を積まれた山口さんだからこそ、このように物事の二面性をとらえた柔軟な考え方ができるのだろう。
決して思い付きや気休めで言っているのではなく、ご自分の経験、科学的な根拠を披露しながら『
認知症のポジティブな面』を説明されているので、納得がいく。
本書の主な目次は以下の通り。
プロローグ
第1章 認知症をポジティブにとらえる
第2章 認知症のポジティブケア
第3章 認知症のポジティブ医療
第4章 認知症にやさしい地域
エピローグ
第1章は、認知症を正しく
前向きに理解するための解説。
第2章は、認知症の症状を本人の視点からとらえて理解し、
ケアに活かす方法をまとめている。
介護される人もする人も共に一人の人間として尊重される関係にあることを基底にして、「パーソン・センタード・ケア」や「ユマニチュード」なども紹介。
介護職にとって、いろいろと参考にできる章だ。
第3章では、認知症の予防から受診・診断・告知・初期対応・終末期医療まで
医療の在り方を、生活の質を高める(QOL)、自分で決める、尊厳を守るという観点からまとめられている。
第4章では、
認知症になっても安心して生活できる社会づくりについて述べられている。
目次だけでも10ページほどあって、各章とも細かく小節立てされている。目次を見て気になる部分から読むことも可能だ。
また、筆者の経験した事例を「ほっとタイム」、本文と関連したテーマについては「ひとくちコラム」でまとめるなどして、読みやすくする工夫もされている。
「長生きで いずれ誰もが 認知症」「やさしさに 笑顔で応える 認知症の人」
など、ところどころに挿入される自作の俳句にもユーモアあふれる山口さんの人柄が感じられ、くすっとさせられる。
「高齢になれば認知症になるのは当たり前」「認知症になってもその人の人としての価値は変わらない」ということが自然と受け入れられれば、本人も介護者も気持ちが楽になるということがよくわかる本だ。
日頃のケアをよりよくするためのヒントがギュッと詰まった内容となっている。
著者プロフィール(引用)
山口 晴保(やまぐち・はるやす)さん
群馬大学 名誉教授、認知症介護研究・研修東京センター センター長/医師。1976年に群馬大学医学部を卒業後、群馬大学大学院博士課程修了(医学博士)。専門は認知症の医療(日本認知症学会専門医)やリハビリテーション医学(日本リハビリテーション医学会専門医)。脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたって病理研究を続けてきたが、その後、臨床研究に転向し、認知症の実践医療、認知症の脳活性化リハビリテーション、認知症ケアなどにも取り組んでいる。