■書名:ヘルプミーヘルパー マンガでわかる介護職
■著者:木山 道明
■出版社:双葉社
■発行年月:2018年1月
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介護未経験のマンガ家が、介護職として体当たりで大奮闘!
本書の作者・キッキーこと木山道明さんは、青年誌などで活躍する漫画家。本人曰く「しがない漫画家」だ。漫画家としての収入だけでは暮らしていけず、家計を助けるために“副業”として介護の仕事を始めたという。
デイサービスが運営する老人介護施設で、週に一度、夜勤の介護スタッフとして働くことになった木山さん。夕方4時半から翌朝8時半まで、3~5人ほどの宿泊サービス「お泊まりデイ」を利用する人を見守る仕事だ。
介護の資格も経験もなく、しかも大の潔癖症で、他人の下の世話などできるはずがない、と思っていた木山さんだったが、なぜ介護の仕事を選んだのか?
それは、故郷の鹿児島に一人で暮らす母親がいずれ介護を必要とすることを見据えて、介護の経験や勉強をしたいと考えたからだという。
本書は、そんな介護知識ゼロの作者が介護の仕事に体当たりで挑む体験談をもとに、次のように構成されている。
第一話 介護のお仕事って!?
第二話 ケアマネージャーのお仕事って!?
第三話 超高齢化社会の問題って!?
第四話 入所介護って!?
第五話 看取り介護って!?
最終話 歳を重ねていくことって!?
それぞれの話の後には、現役ケアマネジャーで訪問介護・在宅介護施設を経営している小山孝子さんによる解説も掲載されている。日本の介護社会の仕組みや高齢者介護の現状が明確に理解できるようになっていて、介護について何も知らない人はもちろん、介護に携わっている介護職にとっても、参考になる1冊だ。
最初は青年漫画特有の濃い画風に、少し抵抗を感じる人もいるかもしれない。しかし、郷里の英雄・西郷どんを思わせる太い眉にごつい体格のキッキーと、個性あふれる利用者さんとのエピソードにすぐに引き込まれる。
・同じ認知症の方の面倒をかいがいしく見ることで生きがいを感じる伊集院さん
・脳梗塞で下半身麻痺の体重90kgの巨漢のサブさん
・寝かせても寝かせてもすぐに起きてきて一晩中徘徊する川崎さん
・あちこちに放尿しまくる甘粕さん
・息子たちから介護放棄され肝臓ガンを患い余命わずかとなったため施設で看取り介護をすることになった柳沢さん など
実にさまざまな利用者さん達と、時には失敗もしながら関わっていく中でキッキーは多くのことを学んでいくことになる。
新人介護職として奮闘するキッキーを温かく見守り、指導してくれるのが、この施設の社長兼ケアマネジャーの東海林雅子さんだ。常にみんなにやさしく、介護スキルもばっちり(巨漢のサブさんも簡単に移乗介助してしまう)というこの社長を、キッキーは「師匠」と呼んで尊敬しているのだが、彼女のセリフは心に染みるものがある。
<「人には役割を……誰かの役に立っているって実感を持たせることが大事よ。自分の存在意義を見つけられたら、どんな病気の人でも前向きになれるものなんですよ。我々介護者にとっても利用者さんの笑顔っていうのは、何よりの報酬なの。認知症の人でも人に元気を与えてくれるわ。」>
<「看取り介護に携わるってことはね、まさにこのメメント・モリを体感することなの。利用者のターミナルケアを通して『死』というものがいかに身近にあるかということを教えてもらえる。それによって自分の人生をも見つめ直すことができるわ。(中略)『看取り』……っていうのはね、介護職だからこそ立ち会える特別な仕事なのよ。」>
最終話でキッキーは、自分の母親が急死するという予想外の運命に見舞われる。
母の介護をする準備として始めた介護職の仕事を続けるべきか迷うキッキー。しかし母親にしてあげられなかったことを、施設の利用者さんにしてあげようと思い直して、車椅子を押しながら新しく入所した利用者さんと話すキッキーの今後にエールを送りたい。
著者プロフィール
木山 道明(きやま・みちあき)さん
鹿児島県出身。神奈川県在住。「イブニング」等青年漫画誌で主に活躍していたマンガ家。主な作品に「ごんたくれ」「オー!まいtea茶」「せごどん」「ザ・トラックマン」などがある。