■書名:完全図解 介護リスクマネジメント 事故防止編
■著者:山田 滋
■出版社:講談社
■発行年月:2018年2月
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介護事故防止のノウハウが詰まったこの本で、「防ぐべき事故」を防ごう!
介護事故をいかにして防ぐかは、介護業界における永遠の課題だ。
本書は、介護リスクマネジメントのプロである著者が、17年間、現場で積み上げてきた“介護事故防止のためのノウハウ”を集めたものだ。
管理職から現場の介護スタッフまで、介護に携わるなら誰でも知っておくべき内容がギュッと詰まっている。
事故防止のノウハウを学ぶ本ではあるが、最初に介護事故防止活動についての基本的な考え方をていねいに解説している点が、本書のポイント。
まずは、従来のような「目指せ!事故ゼロ」といった目標ではどうしても弊害が出ること、そして「事故には防ぐべき事故と防げない事故がある」ことを認めることが出発点となる。
防ぐべき事故がはっきりすれば、事故防止活動の目標が「防ぐべき事故を確実になくすこと」だと見えてくるというわけだ。
巻頭特集と第1章で、介護事故防止についての基本的な考え方を押さえた後、本書は次のように展開する。非常にわかりやすい構成なので、自分に必要な課題が探しやすい。
巻頭特集 事故防止活動に取り組む前のタブー集
第1章 介護事故防止活動の新しい考え方
第2章 事故防止活動の具体的な進め方
第3章 事故発生時の対処の基本
第4章 入所施設における事故防止の具体策
第5章 通所施設における事故防止の具体策
第6章 訪問介護における事故防止の具体策
第7章 安全な介護の技術
どの章、どの項目でも、それぞれの事象についてイラストをふんだんに使って解説されているため、非常にわかりやすくなっている。タイトルに「完全図解」とある通り、十分なスペースを使ってイラスト中心の解説が展開する。
介護の現場は、理論だけでなく実践こそ大切な分野であるだけに、具体的なイメージで理解していけるのがありがたい。
各章の構成にも工夫があり、わかりやすさは抜群だ。
まず各章ごとに、最初の見開き2ページで章のポイントがまとめられている。
介護事故に対する具体策を解説する第4章〜第6章では、それぞれの章で統一したスタイルで説明が進んでいく。
例えば第4章「入所施設における事故防止の具体策」では、すべての事故例について次のような項目にしたがってまとめてある。
・利用者の状況
・事故発生時の状況および対処
・過失の有無:事故は未然に防ぐことができたか
・原因分析:なぜこの事故が起こったのか
・再発防止策の検討
・事故対応や家族への対応は適切であったか
介護現場で起こりうる事故を、事例ごとに整理して理解していけるので、「防ぐべき事故を確実になくす」という目標も実現可能に感じてくる。「目指せ!事故ゼロ」のような観念的なスローガンの下で行われる再発防止策とは、まったく違ったアプローチだということがすぐにわかるだろう。
なお、本書「事故防止編」に対応する「トラブル対策編」として、『完全図解 介護リスクマネジメント トラブル対策編』が同時刊行されている。
どちらも、わかりやすく内容も濃い良書なので、介護現場のリスクマネジメントのレベルアップに役立つことだろう。
著者プロフィール
山田 滋(やまだ・しげる)さん
介護と福祉のリスクコンサルタント。株式会社安全な介護代表取締役。早稲田大学法学部卒業後、現・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社入社。介護・福祉施設の経営企画・リスクマネジメント企画立案等に携わる。2006年より現・株式会社インターリスク総研主席コンサルタント。2014年、株式会社安全な介護を設立。各種団体や施設の要請により年間150回のセミナーを行っている。