■書名:介護に役立つ人体力学
■著者:井本 邦昭
■発行元:PHP研究所
■発行年月:2019年8月
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介護する人もされる人もラクになる「体の理論」をマスターしよう!
介護には様々な苦労があるが、身体的な負担は介護職の誰もが経験するものではないだろうか。
寝たきりの人を起こしたり、ベッドから車椅子へ移乗したりするのに、自分一人で相手を支えるにはコツが必要だ。
そんな身体介助がなかなかうまくできなくて無理を重ねて腕や手首、腰を痛める人も少なくない。
そのような人にぜひ読んでもらいたいのが
『人体力学』に基づいた介護術を教える本書だ。
<人間の力は、臓器や筋肉、骨、そして心が、体の中で互いにメッセージを出し合い、バランスを保っています。どこか一か所でも不具合が生じるとそれをカバーすべく、ほかの部位に負担がかかり、新たな不具合が発生することもあります。
こうした悪い流れの起点を探り、最小限のはたらきかけで、最大限、体の力を引き出していく。
それが人体力学です。>
半世紀以上にわたり、整体師として、たくさんの人の体を見続けてきた著者の井本さんはこのように述べている。
人体力学を介護に応用して、
介護する人もされる人も楽になる移動や移乗の方法、嚥下(えんげ)や呼吸、排せつの問題を解決する方法などを紹介してくれる。
本書の構成は次のようになっている。
1章 介護がラクになる人体力学
2章 介護される人がラクになる人体力学
3章 介護する人が疲れないための人体力学
4章 終活にいかす人体力学
「1章 介護がラクになる人体力学」では、おなかや背中から「相手の中心」をつかまえ、そこから「密着」し「ひねり」、「腰を伸ばす」ことで
移動や移乗をスムーズに行えることを解説。
「起き上がる、寝る」、「立ち上がる、座る」、「移乗・移動する」、「歩く」という4つの場面での介護の方法をカラー写真でわかりやすく説明してくれる。それぞれの介助に「密着」「ひねり」「腰を伸ばす」のタイミングが示されていて、参考になる。
「2章 介護される人がラクになる人体力学」では、
要介護者の体の不調を正すケアが紹介されている。
高齢者特有の体つきが誤嚥(ごえん)や便秘などの問題を引き起こすとして、ノド周りのケア、呼吸器関連のケア、泌尿器関連と便通を助けるケア、気分を明るくするケア、痛み・むくみをやわらげるケアについて、写真にポイントを交えて解説。
「3章 介護する人が疲れないための人体力学」では、
介護する人へのケアについて、腰痛予防、腕や肩・首への負担、イライラを解消する体操などを紹介。こちらも写真とポイント付きで分かりやすい。
そして最後の「4章 終活にいかす人体力学」では、「ラクに死にたい」ためにはどうすべきかがまとめられている。
それは死を目前にしたときに考えるのではなく、今すぐにも「『引き算』の意識を持つ」、「『風邪をひく』ことで免疫力をつける」、「若いうちから『体を緩めておく』」ことが提唱されている。
元気なうちから心身をリラックスさせて、体の要求を聞きながら過ごしていけば、枯れるように逝くことができると井本さんは言っており、そのためにも体のメンテナンスは大事だということがよくわかる。
本書は単に介護者の移動・移乗を楽にする方法を知るだけではなく、
介護する人とされる人とのコミュニケーションが大切だということがよくわかる。
介護において、相手に声掛けをし、体に触れ、預けられた身を受け止めるという一連の動作に思いやりがなくてはできない作業であることを自然とわからせてくれる。
当たり前のことではあるが、そんな『介護の基本』についても改めて知らしめてくれる1冊だ。
著者プロフィール(引用)
井本 邦昭(いもと・くにあき)さん
人体力学・井本整体主宰、医学博士。1944年山口県生まれ。5歳から、整体指導者だった父・良夫氏の手ほどきを受ける。その後、ヨーロッパで鍼灸を指導しながら、スイス、ドイツで西洋医学を学ぶ。帰国後、東京と山口で整体指導を続けながら、東京は千駄ヶ谷に本部道場を設立。日本のみならず海外でも、整体法の普及および後進の育成に努める。