■書名:介護トラブル対処法 介護弁護士外岡流 3つの掟:不毛な裁判や紛争を回避する極意
■著者:外岡 潤
■発行元:メディカ出版
■ 発行年月:2014年1月5日
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裁判では利用者も施設も救われない! 不毛な裁判を避けるためのトラブル対処法
認知症であったり、身体機能が衰えている高齢者が集まる介護の現場では、利用者の転倒、誤飲といったアクシデントはどうしても避けられない。また訪問ヘルパーも、利用者から物品や金銭の窃盗を疑われることも充分に考えられる。
本書は、介護現場で働く職員を対象に、これらのトラブルの予防、回避、解決の方法をまとめたものだ。著者の外岡さんは法律の専門家だが、これまでに介護・福祉系専門の弁護士として、数多くのトラブル事例に関わってきた。
「思いがけないアクシデントが起こったとき、少しでも初期対応を誤り家族や利用者を怒らせると、トラブルがこじれ、裁判にまで行ってしまうケースがあるのです」と、初期対応やトラブル回避の重要さを語っている。
介護事故が裁判に持ち込まれた場合はどうなるのか。
民事訴訟は1~2年かかるなど、長期化してしまうことがざらだ。さらに弁護士費用や打ち合わせなど、コストもかかり余計な手間も必要となる。勝ったとしても控訴されればさらに時間がかかり、負ければ高額な損害賠償の支払い債務が課される。
外岡さんによると、訴えた利用者側はお金目的ではなく「施設側の誠意のなさが許せない」といった理由で裁判をおこすケースが多いという。「しかし、介護の裁判では家族が求めていない事故そのものの過失だけに関心が払われ、金銭の支払い命令が下される。結局、利用者側も施設側も、裁判では救われないのです」(外岡さん)
そこで本書では不毛な裁判を避けるための、ポイントを挙げている。
不幸にしてトラブルが起きてしまったときのために、「外岡流・謝罪の公式」を紹介。これは、相手の不安などを先回りして行動する「先手」、相手に寄り添い、同じ目線で考える「受容と共鳴」、相手の態度や交渉の流れが変わってもぶれない「公平・公正」で、あらゆる場面で使えるトラブル回避のための公式だという。
また、時系列に沿ったリスクマネジメント方法も紹介。トラブル対応のシミュレーション例や、言ってはいけないNGワード、成功例と失敗例、施設のルールを守らない家族やモンスター家族への対応などの困難な例も挙げ、パターン別にトラブル対処法も紹介している。
<同じ人間なのだから、相手の気持ちを一生懸命想像して対応すれば、きっと自分の思いは伝わるということです。間違っても苦情や注文が多い利用者・家族を「クレーマー」などと決めつけて敬遠してはいけないのです>
利用者が求めているのは、トラブルに対しての「誠意」。
介護職員は、常にアクシデントと隣り合わせだ。誠意とは何か、どうやって見せればよいか、相手を納得させる謝罪の方法を知っておくことも大切なことではないだろうか。
<松原圭子>
著者プロフィール
外岡 潤(そとおか・じゅん)さん
弁護士。介護・福祉系法律事務所「おかげさま」代表。2012年、介護トラブル解決専門ADR(裁判にならない紛争解決)を担う一般社団法人介護トラブル調整センター「てるかいご」を設立した。