■書名:100の特養で成功!「日中おむつゼロ」の排泄ケア~寝たきりの利用者が起き上がる、立ち上がる
■著者:高頭 晃紀/監修:竹内 孝仁
■発行元:メディカ出版
■発行年月:2016年2月10日
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おむつは本当にはずせるのか? おむつはずしの理論から施設での取り組みまでを紹介!
2015年8月現在、全国老人福祉施設協議会が認定した「おむつゼロ」の特別養護老人ホームは全国で75。認定を受けていない施設を含めると、全国で約100の施設で、おむつはずしを達成していると言う。しかしながら、この100という数字、けっして多いとは言えないだろう。
著者は、「おむつはずしは、利用者の尊厳を取り戻す旅」だと書いている。
おむつが肉体的にも精神的にも苦痛であることは、誰でも簡単に想像できる。しかしながら、実際の介護の現場では「おむつを前提とした生活」が当たり前になっているのではないだろうか。
なぜ、「おむつゼロ」が進まないのか。著者は次のように指摘する。
<それは、私たち介護に関わる者が、失禁は改善不可能なものだと諦めてしまっているからです。諦めているのは私たちばかりでなく、高齢者も同様です。>
あなたの施設ではどうだろうか。「言うは易く行うは難し」で、実践するのは簡単ではないと実感している人も多いだろう。様々な壁や疑問にぶつかり、もがいている施設長もいるかもしれない。あるいは、取り組みの最初の一歩自体が踏み出せない施設もあるかもしれない。
本書は、そんな介護職や施設長のために書かれた指南書だ。
「便失禁をなくし、トイレに座ることができれば、おむつははずれる」というシンプルな考えは、監修者である竹内孝仁氏が提唱する、いわゆる『竹内理論』が元になっている。その竹内理論の柱は次の4つだ。
●水分:一日1,500cc以上の水分摂取
●食事:一日1,500kcalの食事
●排便:下剤をやめて、自然排便
●運動:とにかく歩く
著者は、「重要なのは、その理論を実践していくためのイメージ」だと言う。
第一章では、4本の柱それぞれの重要性やケアの注意点が解説されている。しかし、それを単に知識として頭に入れるだけでは、本当の意味での理解にはつながらない。その科学的根拠を「利用者一人ひとりに当てはめて考えることが必要」だと強調している。
次の第二章では、施設全体で取り組むためのステップへと進む。コンセンサスを得ることや、委員会の立ち上げといったことから、具体的な排便・排尿ケア、水分ケアなどの進め方が具体的に示される。
さらに第三章では、「必ずぶつかる壁の乗り越え方」に踏み込んでいる。
おむつはずしの取り組みは、誰か一人が頑張ってもできることではない。しかしながら、新しい取り組みを始めるときには、戸惑いや自信のなさからくる抵抗感がある。押しつけにならないよう、職員の納得を得るためにはどうしたら良いだろうか。大切なのは「ビジョンを共有するメンバーを作ること」と「小さな変化を見逃さず、成功体験を積み重ねていくこと」で、それが推進力になると著者は言う。
職員や家族から聞かれる疑問や反論を想定したQ&Aには、次のような説明がある。
<利用者のQOLとはなにか、尊厳とは何か、自立とは何かということを、よく話し合わなくてはなりません。介護保険の目的は自立支援です。このことから始めて、施設とは何か、何をするべき場所なのか、介護とは何をすることなのかということを、よく話し合ってみてください。>
「おむつをはずすことがゴールではない」と著者は言う。
<おむつはずしの過程で、利用者への接遇、声掛け、座位姿勢の重要性、歩くことの重要性などを学んでください。それはおむつはずしにとどまらず、利用者の自立に向けた支援そのものです。>
本書は「おむつはずし」という事例を通して、「プロとしての介護」を学ぶことを促していると言えるだろう。
<小田>
著者プロフィール
著者:高頭 晃紀(たかとう・あきのり)さん
介護施設組織開発コンサルタント、システムエンジニア。東京生まれ。大手金融機関のシステム開発に従事後、1998年より株式会社エオスにて、介護保険関係のシステム開発、および介護施設のコンサルティング業務(介護保険制度解説、介護リーダー育成、ユニット施設への建て替え、介護記録の充実等)に従事している。
監修:竹内 孝仁(たけうち・たかひと)さん
国際医療福祉大学大学院教授、医学博士。専門は整形外科、リハビリテーション医学。1973年より特別養護老人ホームにかかわり「おむつゼロ」を実践、1980年代からは高齢者ケア全般にかかわる。日本ケアマネジメント学会副理事長、介護予防・自立支援・パワーリハビリテーション研究会理事長、日本自立支援介護学会会長。