■書名:援助力を高める事例検討会:新人から主任ケアマネまで
■編集:白木 裕子
■監修:日本ケアマネジメント学会認定ケアマネジャーの会
■出版社:中央法規出版
■発行年月:2018年12月
>>
『援助力を高める事例検討会:新人から主任ケアマネまで』の購入はこちら
事例検討会を実況形式で体験!今すぐ実践に活用できる事例検討会の解説書
介護の現場で実際にあった事例を持ち寄り、介護サービスについて検討を行う「事例検討会」。
ケアマネジャーの中には、「事例検討会」に苦手意識を持つ人も多いのではないだろうか。
地域や事業所で開催される事例検討会において、参加者として、事例提供者として、さらには司会者の立場としても、不安を感じることが少なくないのが現実だ。
本書では、事例検討会に参加する際の心構えや準備などにはじまり、自分の事例を提供する際の留意点なども実践的に学ぶことができる。
事例検討会を企画・実施する際の展開方法についても詳しく紹介されているので、新人、中堅、ベテランを問わず、事例検討会に参加するさまざまな立場の方に役立つことだろう。
第1章 「実況」事例検討会では、理論や実践方法の説明に入る前に、『事例検討会を疑似体験すること』がねらいとなっている。そのため、ひとつの事例検討会が「実況」形式で時間を追って紹介されていく。
事例の設定は興味深く、展開がスリリングで臨場感たっぷりに表現されているので、たちまち内容のおもしろさに引き込まれる。読み進めるうちに、参加者のひとりになったかのように感じるほどだ。
事例タイトルは
『認知症がある利用者の意思をどこまで尊重するか』。
入院していた利用者とその妻が退院先として自宅を希望したにもかかわらず、周囲の判断で療養病床に転院。3週間後に亡くなったというケースだ。
事例提供者は、この老夫婦の願いを叶えられなかったことを後悔し、ケアマネジャーとしての自分の支援を振り返りたいと考えるようになる、といった内容になっている。
この「実況」事例検討会を一読すれば、事例検討会の全体像やイメージをつかむことができることだろう。
なお、第1章は振り返りの事例を取り上げているが、第7章では現在進行形の事例検討会を紹介している。現状に行き詰まり打開策を見つけていく過程が、実況形式でドラマチックに展開される。
より具体的な考え方や実践方法などについては、第2章から第6章までの部分で解説。
事例検討シートの記入方法や記入例のように、そのまま使える実践的な内容も豊富だ。
また、そもそも事例検討会とはどのようなものか、どうあるべきかといった基本的な考え方についてもわかりやすく紹介されている。
その中から、
「実りある事例検討会にするためのルール」を挙げておこう。
本書では、以下の10個のルールを「事例検討会の価値観であり、文化」だと考えている。
1. 守秘義務を徹底する
2. 事例に対して敬意を払う
3. 事例提供者に指示的態度で臨む
4. 上下関係を持ち込まない
5. 自分の体験のみで発言しない
6. 一人一問で質問する
7. 指名されたらできるだけパスをしない
8. 質問には自分の意見を交えない
9. 「手だて」を急がない
10. 常に利用者の視点に立つ
一見してマニュアル本のような体裁だが、その中身は熱いメッセージにあふれており、どんどん読み進めていける。特に「実況」事例検討会は非常に読みごたえがあり、事例検討会の重要性が強く深く伝わる仕掛けとなっている。
事例検討会のあり方を知るためにおすすめしたい一冊だ。
編集者プロフィール(引用)
白木 裕子(しらき・ひろこ)さん
株式会社フジケア取締役社長。看護師・認定ケアマネジャー・主任介護支援専門員。
監修プロフィール(引用)
日本ケアマネジメント学会認定ケアマネジャーの会
『認定ケアマネジャー』の資格を取得し登録した人々のスキルアップ活動を支援する組織。会員の認定ケアマネジャーに対し、より高度なケアマネジメント能力を身につけるための自己研鑽の場を用意し、介護支援専門員に対する実践的な支援および指導ができるような質の高い人材の育成を目指す。