■書名:ケアするまちのデザイン:対話で探る超長寿時代のまちづくり
■著者:山崎 亮
■出版社:医学書院
■発行年月:2019年3月
国が進める「地域包括ケア」。
「地域包括ケア」というと、まず、医療費や介護費を引き下げるための取り組みとして考えてしまいがちかもしれない。確かにそのような側面もあるにしても、地域の住民同士のつながりを増やす試みと考えれば、見方はずいぶんと変わってくる。
著者の山崎氏は、「コミュニティデザイン」の第一人者。近年、コミュニティやまちづくりの仕事の中で医療や福祉分野に関わることが増え、地域包括ケアへの興味につながったのだという。
本書では、次の4つの地域包括ケア先進地域を訪ねて、「ケアの機能をもつ地域のつくりかた」を探っている。
・新潟県長岡市/高齢者総合ケアセンターこぶし園のサポートセンター
・滋賀県東近江市/魅知普請の創寄りとチーム永源寺
・埼玉県幸手市/地域包括ケア幸手モデル
・石川県金沢市/Share金沢、三草二木 西圓寺
それぞれの地域において、医療・介護・福祉といった「ケア」の実践者と「まちづくり」の実践者に会い、考え方や実践のプロセスについてじっくり聞き取りをしている。
座談会形式で行われたものがほぼそのまま掲載されていて、臨場感にあふれ、参加者の個性も鮮やかに浮かび上がっていて興味深い。
「地域包括ケア」に対する参加者1人ずつの考えがダイレクトに伝わってくる。
その中で、滋賀地方自治研究センター理事・北川憲司さんの「人と人をつなぐことで9割くらいはうまくいく」という言葉は、医療・福祉の分野がまちづくりにとても近いことをよく伝えるものだろう。
実際のところ、滋賀県東近江市の地域コミュニティである「チーム永源寺」には、医療や介護の専門職以外に、商工会やお巡りさんまで加わっているのだという。
埼玉県幸手市の「幸手モデル」でも、人と人とのつながりがベースになっている。
住民同士が身近な人をケアし合い、どんな人でも社会に貢献したり繋がったりしていることを感じられる居場所が作られている。
まちづくりに関わる「コミュニティデザイナー」と呼ばれる住民がたくさんいて、たとえばコミュニティカフェでは、高齢者に居場所とつながりを提供しているのだ。
最後の章では、地域包括ケアの実現に向けて、著者による多角的な考察がまとめられている。
<(地域包括ケアを)知り合いと信頼を介したやりとりを増やす試みだと考えれば、やる価値が感じられるものとなる。(中略)自分たちの生活や人生を楽しく安心したものにするために、自分自身と地域の関わり方を再考するきっかけだととらえることもできる。この機会を利用して、ケアとデザインとが融合するまちづくりを各地で進めることもできるだろうし、生活や人生が充実していると感じる人を増やすこともできるだろう。>
医療・福祉分野の人とは一味違う、コミュニティデザインの専門家ならではの言葉はとても新鮮だ。
そして、地域包括ケアとまちづくりはとても近いものであり、むしろ一緒に考えていくべきであることもわかる。
介護に関わる人ならどんな立場であっても、読むと視野が広がる一冊だ。
山崎 亮(やまざき・りょう)さん
コミュニティデザイナー、社会福祉士/studio-L代表取締役。1973年愛知県生まれ。1999年大阪府立大学大学院修士課程修了(地域生態工学専攻)、2013年東京大学大学院博士課程(工学)修了。建築設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たち自身が解決するのを手助けする「コミュニティデザイン」に携わる。現在、慶應義塾大学特別招聘教授、NPO法人マギーズ東京理事。
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