■書名:ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言
■著者:長谷川 和夫、猪熊 律子
■出版社:KADOKAWA
■発行年月:2019年12月
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認知症の第一人者・長谷川和夫先生の最新刊!認知症当事者の思いが語られた1冊
介護に携わる人で『長谷川式簡易知能評価スケール』略して『長谷川式スケール』を知っている人は多いのではないだろうか。
長谷川式スケールとは『今日は何月何日ですか?』『ここはどこですか?』『100から7を引いてください』などの質問にどれくらい答えられたかで
認知症かどうかを判断するもの。
日本全国で広く利用されている認知機能検査である。
この長谷川式スケールを考案したのが、著者の長谷川和夫さんだ。
半世紀以上にわたって、数多くの患者を診てきた認知症の専門医で、「痴呆」から「認知症」への呼称変更に関する国の検討委員も務められた
認知症診療の第一人者である。
そんな
長谷川さん自身が認知症になった。
自分の研究対象である病気に冒されてしまったショックで普通なら気落ちしてしまいそうな出来事に、長谷川さんは冷静に向き合い、自ら病気を公表。
当事者となったことでわかった認知症のことを本にまとめ、正確を期すために、新聞社編集委員である猪熊さんと一緒に制作したのが本書だ。
本書は次の7章から構成されている。
第1章 認知症になったボク
第2章 認知症とは何か
第3章 認知症になってわかったこと
第4章 「長谷川式スケール」開発秘話
第5章 認知症の歴史
第6章 社会は、医療は何ができるか
第7章 日本人に伝えたい遺言
本書を読むと、長谷川さんの半生が日本の認知症診療の歴史とぴったりあてはまることがよくわかる。
かつては「痴呆」と呼ばれていた病が「認知症」となるまでの過程、社会がこの病にどのように対処してきたか、医学的にどこまで解明できているのかといったことを知ることができる。
また、長谷川式スケールの開発秘話にも興味がそそられる。
関わってきた多くの認知症患者さんのエピソードの中には、身内のことにも触れており、それがもとになって
「だいじょうぶだよ ぼくのおばあちゃん」という絵本になったことも記されている。
そして何より、認知症の専門家が認知症となって、どのように世界が見えているのかということに関心が湧いてくる。
<まず何よりもいいたいのは、これは自分の経験からもはっきりしていますが、「連続している」ということです。人間は、生まれたときからずっと連続して生きているわけですから、認知症になったからといって突然、人が変わるわけではありません。昨日まで生きてきた続きの自分がそこにいます。>
認知症の症状は「固定されたものではない」と続き、調子のいい時もあれば悪い時もあるという。
認知症になっても、その人らしさは失われないということは、今よく言われることだが、
「連続している」
「昨日まで生きてきた続きの自分がそこにいる」
「固定されたものではない」
という長谷川さんの実感はまさしくそれを裏付けるものだろう。
全編を通して、長谷川さんは自身の呼称を「私」でも「僕」でもなく、「ボク」と表現しているのだが、そこに飄々(ひょうひょう)とした長谷川さんの人柄を感じることができる。
そして、認知症を暗い気持ちになって堅苦しく捉えるのではなく、もっと軽やかに乗り越えていける病として接していこうという思いも感じられる。
表紙にはまっすぐこちらを見つめる長谷川さんの写真が使われている。
研究者としての凛とした雰囲気もあるが、微笑みを含んだ優しさも感じられてとてもいい顔をされている。認知症になっても大丈夫という希望が感じられる。
ぜひ一読して、自身の認知症の認識を見直してみてはいかがだろうか。
著者プロフィール(引用)
長谷川 和夫(はせがわ・かずお)さん
1929年愛知県生まれ。53年、東京慈恵会医科大学卒業。74年、「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表(改訂版は91年公表)。89年、日本で初の国際老年精神医学会を開催。2004年、「痴呆」から「認知症」に用語を変更した厚生労働省の検討会の委員。「パーソン・センタード・ケア」を普及し、ケアの第一人者としても知られる。現在、認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医大名誉教授。
猪熊 律子(いのくま・りつこ)さん
読売新聞東京本社編集委員。1985年4月、読売新聞社入社。2014年9月、社会保障部長、17年9月、編集委員。専門は社会保障。98~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「John S. Knight Journalism Fellowships at Stanford」修了。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。
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