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2017年11月23日

2018年度の介護報酬改定では、ヘルパー以外でも生活援助が可能に? | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

訪問介護の生活援助は、簡単な研修で誰でもできるように

10月末から本格化した、2018年度介護報酬改定についての議論。
2週にわたり、社会保障審議会介護給付費分科会で議論されている訪問介護関係の問題について取り上げます(前回記事はこちら)。
11月1日の会議では、訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護の報酬・基準についての議論が行われました。

ここで議論された中に、訪問介護の生活援助についての取り扱いがあります。
議論されたのは、生活援助の担い手の資格要件の緩和です。
これから創設する、介護職員初任者研修よりさらに簡易な研修を受講すれば、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者ではなくても、生活援助を担えるようにする。そして、資格要件緩和に合わせて、報酬を引き下げるというのです(*1)。
その分、身体介護に重点化した報酬を考えていくということのようです。


生活援助の専門性は評価されない?

この件については、過去の議論で以下のような意見が出ています(*2)。

・人員基準の引き下げを行って、結果として報酬の引き下げまで行って、担い手が本当にいるのか。

・生活援助と身体介護はきれいに切り分けられないのではないか。利用者が出来る範囲で参加すること自体が生活機能の維持・向上に資するため、利用者の状態に合わせた援助と家事代行とは区別していく必要がある。

・1人1人の認知症の症状は違い、非常にきめ細かい配慮を必要とする。訪問介護員の資格を持った人が役割を果たしており、その役割、尊厳に見合った報酬と基準をきちんと確保すべき。

介護保険の訪問介護で生活援助を提供することの是非については、長年、議論が繰り返されてきました。
介護保険による有資格者での生活援助サービス提供については、「家事は家事サービスに任せればよい」「介護保険の財源を使って提供する必要はない」などの意見がよく聞かれました。
一方、必要を訴える意見としては、一般に下記のような意見をよく耳にします。

・生活援助があることで在宅生活の継続が可能になっている人は多い。介護保険からはずされれば、そうした人は施設に入居せざるをえなくなる。

・本人の能力や性格を見極めて適切に声をかけながら一緒に家事を行ったり、本人の様子、生活状況から異変がないかを見極めながら家事等を行ったりする生活援助は、高い専門性を必要とする。

生活援助を必要とする、こうした意見で指摘されている事柄は、その成果を数値で測ることができません。
最近、別途議論されている「科学的介護」の視点からすると、支援による成果を客観的に示しにくいのです(「科学的介護」に関する記事はこちら)。

介護の専門性とは本来、属人的で、そうした点にこそ専門性があるものだと思います。
しかし、成果に見合う報酬を検討していく場合、そうした目に見えない成果や専門性を、多くの人々の間で共通認識としていくことの難しさを感じます。


ヘルパーはプライドや自信を失っていることも

生活援助におけるヘルパーの専門性を客観的に評価できないことは、ヘルパーなどの介護職のプライドや自信も損なっています。
ある訪問介護事業所の管理者は、ヘルパーに自信を付けてもらう時には、訪問看護師等の協力を得て、医学的管理を必要とする利用者への適切なケアを身につけさせているといいます。

在宅医や訪問看護師が入っているケースの訪問介護で、ヘルパーは何に留意してケアにあたればいいか。どのような変化を「異変」としてとらえて、医療職につなげていく必要があるか。
そうして視点と情報収集力、感性を身につけさせることで、ヘルパーはプライドも専門性への自信も高めることができるというのです。

それは反対にいえば、生活援助における専門性が、評価されない現状を表しています。
生活援助における支援でどれだけ専門性を高め、発揮できるようになっても、適切に評価されないために、プライドや自信を持つことにつながりにくいのです。これは本当に残念なことです。

報酬の議論も大切ですが、介護の専門性についての共通認識を持てる環境づくりにも努めてほしいと切に思います。
それができていないことも、介護職の離職、人材不足につながっているのではないでしょうか。

数値化できない介護の成果も認められる、評価できる仕組みがあれば、介護職は自らの専門性にプライドを持ち、そのプライドに見合う報酬を勝ち取っていけるのではないかと思います。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*1 訪問介護の生活援助、ヘルパー以外も可能に 新研修が要件 報酬減が焦点(JOINT 2017年11月1日)
*2 訪問介護の報酬・基準について(第149回社会保障審議会介護給付費分科会)【PDF】

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