自宅や介護施設での看取りが増加。「在宅で看取り」希望は6割超え
人生の最後を迎える看取りの場。
2017年の人口動態調査によれば、
1950年代初めには、医療機関での看取りはわずか1割強。8割強が自宅での看取りでした。
それが、時代が下るにつれて医療機関での看取りが増え、
2005年には反対に8割強が医療機関で看取られるようになりました。
一方、老人ホームや介護老人保健施設など
介護施設での看取りは、調査の選択肢に加わった
1990年には0.1%にも満たない数でした。
それが
2017年には、約10%にまで増えています。
自宅での看取りも、2005年には12.2%まで減りましたが、
2017年には13.2%とわずかながら増えています。「できるだけ在宅で最期を迎えたい」と望む国民は、6割を超えているという調査結果もあります。
今後も、医療機関以外での看取りは増えていくことでしょう。
最期の生活を支えているのは「介護職」
2018年に厚生労働省が発表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」では、医師、看護師、介護職員と、担当する死が近い患者・入所者との医療や療養についての話し合いの状況が明らかにされています。
介護職員(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設職員)は、死が近い入所者あるいはその家族と十分な話し合いを行っているかという問いに対して、
「十分行っている」「一応行っている」の回答が、合わせて55.7%。「ほとんど行っていない」が30.9%です。
一方、
医師は「十分行っている」「一応行っている」の回答が合わせて65.4%、看護師は61.3%です。「ほとんど行っていない」という回答は、医師が12.8%、看護師が16.3%と、介護職員に比べて、医療職は死が近い患者・入所者との話し合いが十分に行われている実態がうかがえます。
また、医師や看護師では、「人生の最終段階の患者・入所者に関わっていない」との回答が2割前後あります。
一方、介護職員で「関わっていない」という回答は1割強にとどまります。
患者・利用者側では病院で最期を迎える人は多くても、最期を迎えようという人に関わることは、
医療職より介護職員の方が多いのですね。
看取り=「どう生ききるか」を支えること
この調査では、死が近い患者・入所者との話し合いを「行っている」と回答した人に対して、
どのような話し合いをしているかについても質問しています。
「人生の最終段階の症状や行われる治療内容や意向」について話し合っているという回答は、医師・看護師が8割を超えますが、介護職員は7割弱です。
ただ、こうした内容の話し合いができているかどうかは、医療職と差がついても不思議はないかもしれません。
それより意外に感じたのは、
「本人の価値観や目標」についての話し合い。
医師の43.5%、看護師の32.7%が話し合っていると回答しているのに対し、
介護職員は23.4%しか話し合っていません。
本来であれば、介護職員こそ「本人の価値観や目標」について、入所者とじっくりと話し合う必要があります。看取りは、「どのように最期を迎えるか」を支援するように思えますが、実は
「どう生ききるか」を支えることだとも言われています。
人生の締めくくりの日まで、その人の望むとおりにどう生ききってもらうか。
その最期の日々の支援の在り方を考える上で、
「本人の価値観や目標」を知ることは不可欠ではないでしょうか。
また、死が近い入所者と、医療や療養についての話し合いをほとんど行っていないと回答した介護職員は、その理由について、32.8%が「人生の最終段階における話し合いのノウハウがない」と回答しています。同じ選択肢についての医師の回答は10.3%、看護師の回答は26.2%です。
介護職員は、終末期の入所者との話し合いについて「ノウハウがない」ままにせず、研修等で身につけてほしいものです。
終末期に自分が受けたい医療や療養について、あらかじめ書面にしておく「事前指示書」の作成は、66%の国民が賛成しています(*)。
高齢者の死に近いところで働く介護職員が、事前指示書の作成も含め、終末期にある入所者と最期の迎え方について話し合う力をつければ、介護施設での看取りは今後もっと増えていくのではないでしょうか。
<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>
*終末期の延命治療 意思を伝えておく大切さ(毎日新聞2019年9月23日)