毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「ヘルパーは気が利かなくても大丈夫?」という話題について紹介します。
気を利かせたつもりが、大変な事態に
社会人として、「気が利かない」という評価は、どう見てもネガティブなもの。気が利く人が重宝されるのは分かるが、それなら“気が利かない人”は、どうなのだろうか? 介護事業所で10年以上働き、新人採用や新人教育にも携わるHさんは、「訪問ヘルパーは気が利かない人でもまったく問題はない」と語る。Hさんはこう語る。
「もちろん“気が利く人”の方が良いことは否定しません。けれども知識も経験もないのに“気を利かせたつもり”で行動する人よりは、最初から『自分は気が利かないから』と、慎重に行動する人の方がよっぽどありがたいですね。
何年か前のことなんですが、まだ経験の浅い男性スタッフが、訪問先で利用者の求めに応じて、独断で痰の吸引を行ったんですね。痰の吸引は医療行為にあたるため、絶対にNG(現在は条件を満たせばOK)。これが後々、大問題になったんです」
男性スタッフは“事情聴取”の際、「それなら、苦しそうな利用者の要求を無視すればよかったのか?」「臨機応変に対応したのに……」などと開き直り、自分はさも良いことをしたという姿勢を崩さなかったのだとか。痰の吸引は法律違反なので問題外だとしても、本当に訪問ヘルパーは気が利かなくても大丈夫なのだろうか?
ケアプランに沿って対応すればOK
「そもそも我々訪問ヘルパーは、ケアプランに基づいて利用者の生活援助や身体介助を行います。その中でも例えば、利用者の部屋がどれだけ汚れていても、利用者が『そのままでいい』というならそのままでいいんです。寿司屋に行ってウニを頼んだら、『お客さん、ウニは体に悪いよ』って言いながらカッパ巻きを出してきたら怒りますよね? 気を利かせたつもりでもそれは『余計なお世話』ってヤツです。
だからスタッフはそれほど気を利かせる必要はないんです。スタッフが訪問する時間は決して長くありません。ケアプランに沿って、それをきちんとこなせば時間はすぐに経ってしまうはず。それに、ケアプラン以外のサービスをするのは基本的にできません。プラン内で気を利かせて動くのは、自分がヘルパーとして経験を積み、なおかつ利用者との信頼関係が築けた上で、初めて考えれば良いことです」
Hさんは、それでも(「気が利かない」ということが)気になるようなら、利用者に言われたこと、利用者の特徴などをこまめにメモする癖を付けたほうが良い」と、アドバイスしている。「気が利かないから……」と、諦めてしまう前に、やれることはいくつもあるようだ。