毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「届かなかった年賀状」という話題について紹介します。
老人ホームの入居者も楽しみにしている「年賀状」
お正月の楽しみと言えば、家族や親戚との団らん、おせち料理、お正月番組、お年玉など、色々あるが、忘れてはいけないのが年賀状だ。
近年はメールやSNSなどの普及により、年賀状を出す人が少しずつ減っているが、旧友からの便りはやはり嬉しいもの。
しかし都内の介護付き有料老人ホームに勤めるユキコさんは、毎年この季節になると、“悲しい代筆”に追われるという。
ユキコさんは、都内の介護付き有料老人ホームで10年以上働いている40代の女性。いつも笑顔を忘れず、思いやりにあふれた仕事ぶりで、入居者からの信頼も厚い。
特技は書道で、常日頃から手紙の宛名書きなどに駆り出されていた。そんなユキコさんが大忙しとなるのがお正月だ。
ユキコさんがいう。
「毎年、お正月になると、施設で暮らしている入居者のもとにも大量の年賀状が届きます。もちろん入居者たちが一番喜ぶのは、家族や友人が会いに来てくれることですが、手紙が届くのもとても嬉しいようです。
80~90代の方の間ではまだまだ手紙文化が健在のようで、年賀状や暑中見舞いの季節以外に手紙が届くことも少なくありません」
ユキコさんが働く施設は全室が個室だが、一人ひとりに郵便物が届くわけではなく、施設宛てに送られた郵便物をスタッフが仕分けするそう。
しかし元旦に年賀状の仕分けをしていると、必ず一定数の“届かない年賀状”が見つかるという。
年賀状から見えた、入居者の意外な一面
「年齢が上がると、年賀状でしか交友がない人が多いのでしょうね。毎年、亡くなってしまった人宛ての年賀状が必ず来るんです。
今年のお正月も、亡くなった方への年賀状が何十通もありました。ウチの施設では、そういった年賀状はご家族にまとめて転送しているのですが、中にはそういったご家族がいらっしゃらない方もいます。
そのような方に届いた年賀状に関しては、私がお返事を書いています。
差し障りのない範囲で文面を見ると、長年施設で暮らしていた方の知られざる過去を知ることもあります。
一緒に山登りをしたのが懐かしいとか、またコーラスの会にいらして下さいとか、『そんな趣味があったのか』と、驚かされることもしばしばです」
楽しげな様子が記された、心のこもった手紙の受け取り手が亡くなっているという事実に、目を赤らめるスタッフもいるのだそう。
毎年、年賀状を仕分ける作業をする度、前年に亡くなった人の思い出話に花が咲くそうだ。