毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「介護職に向いていない人」という話題について紹介します。
介護職にも向き・不向きがある
人が仕事を辞める時には、必ずその理由があるもの。給料が安い、人間関係がうまくいかない、労働時間が長過ぎるなど、その理由はさまざま。
しかし、なかなか理解されにくいのが「向いていなかった」という理由だ。給料や労働時間であれば、就職する前にある程度情報を仕入れることができるが、「向いている・向いていない」は、実際に働いてみないと分からないことも多い。
介護業界にも向いているタイプ・向いていないタイプというものはあるのだろうか?
都内の介護付き有料老人ホームで働くカシマさんがこう語る。
「10年以上、介護業界で働き、最近では採用面接や採用後の新人教育などを担当するようになって、たいていの人は問題なく働けるということが分かりました。
敬語がまったく使えず、あらゆる相手に友達口調で話す10代の女の子、人の目を見て話すことができない30代の男性、ひと目で“元ヤン”と分かる20代の女性、10年以上ひきこもりだった30代の男性など、これまで何人も『大丈夫なの?』と思ってしまう人を採用してきましたが、今ではみな大切な戦力として働いています。
我々にはこれまでの経験で培った介護のノウハウがありますので、まずは一人ひとりに合った仕事を任せ、徐々に適応させていくことで、定着率を上げるように努めています」
一口に介護付き有料老人ホームでの介護職といっても、その仕事内容は多岐にわたる。だからこそこういった芸当が可能になるが、カシマさんがこれまで多くの新人を見てきた中には、「介護職には向いていないな」というタイプもいたそうだ。
きれい好き?潔癖症? 新人スタッフの極端な“手洗い”
「介護をする時に大事なことの一つが衛生面の管理です。清潔な状態が保たれていなければ、利用者さんの健康に影響が出ますし、最悪の場合は感染症なども発症しかねません。だから『きれい好き』の人は大歓迎です。
そうは言っても、潔癖となると話は別です。
介護の仕事では、排泄の処理の時間が大きな比重を占めているのですが、排泄介助が終わる度に、必要以上に手をゴシゴシと洗う新人がいました。
それ以外でも、利用者が食べ物をもどしてしまったり、よだれを垂らしたりした時なども、処理をした後、同じように神経質そうに時間をかけて手を洗うのです。
介護職にとって清潔さは必要なものですが、手を洗うことにあまり時間をかけすぎると業務にも差し支えてしまいます。
それに、何度も何度も必要以上に手を洗う姿を見て、利用者さんが不信感を持ってしまったのです。
本人と面談すると、『潔癖症なんです』『手を洗わないと、気持ちが悪い』と言うので、手洗いのガイドラインを使って勉強会を行ったり、使い捨て手袋の着用を徹底したりしましたが、どうしても本人は手洗いをしないと気になるようでした。
何度も本人と話し合いましたが、結局そのスタッフは『自分には向いていなかった』と言って、退職してしまいました」
一般的に、「きれい好き」といえば褒め言葉だが、「潔癖」になるとネガティブなイメージになるのが難しいところ。
潔癖にも人によって度合いがあるだろうが、度が過ぎる潔癖の人は「介護職には向いていない」ほうに含まれるのかもしれない。