毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「罪を犯した人は介護業界で働ける?」という話題について紹介します。
前科者は介護福祉士になれない?
テレビのニュース番組や新聞を眺めていれば、毎日のように報じられるのが様々な事件。
罪を犯した人間は、当然その罪を償わなくてはいけないが、“償ったその後”が語られることは稀だ。
いわゆる“前科者”が色眼鏡で見られるのはある程度仕方のないこと。それでも再び社会に出たら、働かなければならない。
しかし、介護業界では前科があっても働くことはできるのだろうか?
例えば介護福祉士の国家試験に関しては、禁錮以上の刑に処された場合には、一定期間、資格の登録を受けることができないが(※注)、その期間を過ぎれば登録が可能だ。
中には、刑務所の再犯防止に向けた職業訓練の一環として、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)や介護福祉士の資格取得プログラムを行っているところもあり、資格を取得した受刑者も現れている。
※注:執行猶予の場合には執行猶予期間が満了となるまで。実刑の場合は、実刑期間の満了までとその後2年間
少ない例かと思われるが、関東地方の介護施設で働くTさんには、一風変わった経歴の同僚がいたそうだ。
少年院あがりのヘルパーS君
「前科とは違いますが、私がかつて勤めていた施設には“少年院あがり”のヘルパーがいました。ある時、S君という後輩と出身校の話しになったら、S君が『中学は私立だったけどそこを辞めて、その後は国立の学校に行ったんです』と言うんです。
S君はお世辞にも国立というタイプではなかったので、単なる冗談かなと思ったら、『実は……』ということで、少年院に入っていたことを告白しました」
介護業界には、いわゆる“元ヤン”の人間は少なくないが、「そういうところにいた人に初めて会ったので、すごく驚いた」というTさん。
「経歴が問題になることはないの?」という不躾な質問に対するS君の答えは明快だったそうだ。
「面接で(少年院のことを)聞かれたら正直に答えます。でも聞かれなければ、こちらから『少年院にいました』とは言いません。
そもそも文房具屋で売ってる履歴書(厚生労働省が推奨するJIS規格のもの)に『賞罰』という欄はないんです。だから何もウソはついていませんし、やましい気持ちは一切ありません」
S君によれば、「細かく調べられたら一発で分かりますけど、そのせいでクビになったら自分のせいだと思って諦めます」とのこと。
Tさんによれば、S君は利用者からも評判がよく、とても熱心に介護の仕事に取り組んでいるそう。そんな熱心な“少年院あがり”であれば、事業者にとってもありがたい人材なのではないだろうか。