毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「未経験者の定義とは?」という話題について紹介します。
転職活動では「経験」はアピールポイントに
就職や転職をする際、大きなポイントになるのが経験の有無。もし経験があるのなら、自分の経験をアピールするのは当たり前だ。
介護業界は他の業種よりも未経験者への門戸は広いが、転職活動で経験があることをアピールするのは、介護業界でも同じこと。
施設によっては経験の有無で給料が違うなど、経験がある者はやはり何かと優遇される上、労働条件も良くなることもある。
「介護経験あり」と言っていたヘルパーが現場に行くと…
それゆえ、経験がないのに経験者だと言いはる者もいるという。
都内の訪問介護事業所で働くハセガワさんは、先日ヘルパーとして採用した人に驚いたそうだ。
「50代の女性Aさんは、面接で『介護業界の経験がある』と、確かに言いました。ところが採用後、同行した先輩ヘルパーが『Aさん、何にもできないですよ』と言うのです。
介護経験者だと思って採用したので、おかしいと思って改めて尋ねてみると、Aさんが主張する介護業界の経験とは
『家族の介護』だということがわかりました。
それも年に1~2度、夫の実家に帰省した際に、面倒を見るだけだったのです」
介護経験は「どこで」「何を」を面接時に説明
ハセガワさんは「『介護業界の経験はあるんですか?』と聞きましたよね」と迫ったが、Aさんは「『介護の経験はあるか?』と聞かれました」と主張し、話は水掛け論に。
「たとえ経験者でも訪問介護と施設介護ではケアの仕方も違うし、どんな経験があるのかを面接で具体的に質問しなかった自分の失敗です…」
とハセガワさんは言うが、Aさんの言い分は、草野球とプロ野球を一緒にするようなもの。
家族の介護も確かに立派な介護だが、ヘルパーとして仕事をするには必要な技術や言葉遣いも変わってくる。
どんな「介護」を経験したことがあるのか、転職するときには正直に話した方がよさそうだ。
未経験者なのに手際がいい、この新人は何者?
一方で、ハセガワさんは、こんな女性にも出会ったことがあるという。
「パートのヘルパーとして面接に来たBさんという女性は、提出された履歴書には介護業界歴がありませんでした。
しかし、実際に働き始めると非常に手際が良く、利用者さんからの評判もいい。とても未経験の新人とは思えない働きぶりだったんです。
そこで『あなた、本当に介護業界の経験はないの?』と尋ねると、彼女は、『実は……。以前○○で働いていました』と、事業所の近くにある介護施設のことを話してくれたのです」
Bさんは数十年前に短期間だけ介護施設で働いて、結婚のために仕事を辞めていたため、
「私なんかが経験者を名乗る権利はないと思った」と、言ったそう。
履歴書に、持っていない資格や経験していない経歴を書けば、それは立派な犯罪行為だが、資格や過去の経歴を書かないのは“グレーゾーン”だ。
ハセガワさんは、「ウソはダメよ」とBさんを叱ったが、すぐに時給を経験者と同じ水準まで上げたそうだ。
自分の経歴は正直に。不安があれば面接時に話して!
「介護職」の経験がないのに「介護の経験がある」と言い放ったAさんや、短期間で辞めた介護施設での職歴を隠していたBさんの例は極端なものだが、やはり転職活動・就職活動では
『どんな仕事をしてきたか』を正直に話す必要がある。
「介護が未経験でも、これまでどんな仕事をしてきたかで人となりはわかるし、どうやってケア方法や利用者さんとの関わり方を覚えてもらうかの参考になるので、ありのままを話してほしいですね。
反対に、短期間でも介護業界で働いた経験がある人も大歓迎です。『経験が短くて不安』という人も、正直に話してくれれば、きちんと研修しますよ!」
とハセガワさんは語る。