毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は「在宅介護を悔む人」について取り上げます。
老いた身内の面倒を身内の誰かが見るというのは、それが正解かどうかはさておき、一般的には“美談”の類。介護サービスを受ける側、サービスを頼む家族ともども、喜んで「他人」に身内をお願いしようという人は少数派だろう。しかし、5年近くも母の面倒を見たA子さんは、今もその苦しみが頭をよぎるという。
関東地方に住むA子さんは、約5年間、母の介護を行ってきたが、先日母は亡くなった。母の面倒をA子さんが見ていたことは、親族のみならず、知人や近所の人なども知っていたため、母の死後、A子さんは「ご苦労様だったね」と、それまでの労をねぎらうようなことを言われたり、「お母さんはA子ちゃんに世話してもらって、きっと幸せだったよ」というような言葉を投げかけられたりしたそうだが、A子さんはこれに強い違和感を覚えたのだという。
A子さんは、元気だった母が認知症となり、自分で自分の身の回りのことができなくなり、はては家族のことが分からなくなり……という過程をすぐそばで見続け、それでも面倒をみなくてはいけない状況を、他人から美談のように言われることが耐えられなかったのだとか。ぶっちゃけて言えば、その介護は「辛い」の一言だったのだ。
そして母がいなくなった今、「私の苦労は無駄だったのではないか」というむなしさに似た考えが頭をよぎるのというA子さん。彼女は、最後まで母を介護したことを誇りには思っているものの、介護のプロの手を借りることを真剣に検討しなかったことは、深く後悔しているのだという。
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