毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「ヘルパーに託された利用者のお宝」という話題について紹介します。
訪問介護の利用者が大切にしていた“お宝”
親が亡くなり、実家を掃除していたら、見慣れぬ骨董品を発見。鑑定してみたら──人気長寿番組『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)では、そのような夢物語が現実になったり、打ち砕かれたりする瞬間を何度も紹介してきた。
都内の事業所で訪問ヘルパーとして働くシオリさんは、先日、身近でそのような場に遭遇したという。
シオリさんが遭遇したのは、利用者の80代男性・Nさんと、その家族に起きた出来事。
Nさんは、妻を亡くして以来、一人暮らしをしており、認知症になることもなく元気に生活を送っていた。
だが、昨年5月にガンにかかっていることが判明。
シオリさんとNさんの付き合いは、すでに5年近くに及んでおり、シオリさんは、Nさんから余命がいくばくもないことを知らされた。
Nさんは、遠方に住む息子や娘を自宅に呼び寄せると、自分の余命が僅かであることを告げたが、ある大事なことをなぜかヘルパーのシオリさんに託した。
シオリさんが語る。
「Nさんのお宅はゴミ屋敷のような状態だったのですが、そんな状態でも非常に大事にしていたのが、桐の箱に入った掛け軸でした。
Nさんは度々『この掛け軸はね……』と、その品を私に自慢していましたが、お子さんたちは、その掛け軸の存在を知らないのだそう。Nさんは、子どもたちを驚かせたかったようで、『オレが死んだら、この掛け軸を子どもたちに渡してくれ』と言うのです。
私は『そんな高そうなものを……』『万が一トラブルになったら……』と、何度も断ったのですが、結局Nさんに押し切られてしまいました」
その後、ほどなくしてNさんは亡くなり、シオリさんは子どもたちに連絡を取って、掛け軸のことを話した。
しかしその結果は、シオリさんを唖然とさせるものだった。
ヘルパーが目の当たりにした、利用者家族の実態
「お子さんたちは、やはり掛け軸の存在を知らず、『いくらかしら?』『こんなものを持ってたなんて』と、非常に驚いていました。
私は、Nさんが度々この掛け軸を自慢していたこと、『50万円か100万円か。もっとするかもしれない』などと言っていたことを話し、私の任務は無事終了しました。
しかし、その後の娘さんからの連絡には思わず言葉を失いました。
遺品として大切にするよりも現金にすることを選んだようで、娘さんはその掛け軸を鑑定に出したとのこと。
しかし鑑定結果は、まさかの4500円。鑑定料に2万円かかったため大赤字だったそうで、非常に不機嫌でした」
まさに『なんでも鑑定団』を地で行くような話。
シオリさんなら「自分の父親がそんなにも大切にしていたものなら、遺品として自分も大切に持っていることを選ぶ」とのこと。Nさんの娘さんとの考え方の違いに、シオリさんは言葉を失ったのだそう。
娘さんはよほどショックだったのか、はた迷惑なお願いを託されたシオリさんへのお礼の話は、最後まで一言も出なかったそうだ。