毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「お年寄りは郵便屋さん泣かせ」という話題について紹介します。
高齢者は郵便料金の値上げを知らない?
今世紀に入ってからの連絡手段の発達のスピードはますます速くなり、若者でさえついていくのが難しいレベル。
かつては電話か手紙ぐらいだった連絡方法は、パソコンや携帯電話の普及によって一変し、電子メール、LINE、Facebook、Twitter、Skypeなど、バリエーションはどんどん増えている。
しかし、現在介護の手を必要としている80~90代の高齢者は、自宅に電話さえないことが珍しくなかった世代。いまだに手紙で近況を伝え合う人も少なくない。
都内の介護付き有料老人ホームで働くユキコさんによれば、手紙にまつわる事件は少なくないという。
ユキコさんがいう。
「昨年頻発したのは、切手代が足りなくて郵便物が届かないというトラブルでした。
入居しているお年寄りが、『○○さんにお手紙を送ったのに、返事がない。いつもなら1週間以内には絶対に返事が届くのに。前々から体の調子が悪いって仰ってたから、もしかしたら亡くなってしまったのかしら……』などと話をしてきました。
一緒に心配していたら、何のことはありません。切手代が足りなくて届いていなかっただけでした。
新聞も読まなければテレビも見ないお年寄りは、郵便料金の値上げのニュースなんて知りませんよね。料金が上がった直後には似たようなケースが何度もありました」
利用者の中には、手紙が戻ってきてしまうのがイヤだからと、かなり多めに切手を貼る人もいるのだそう。
こうなると、郵便局にとっては“良いお客さん”だが、一方では郵便局員泣かせの手紙を見かける場合もあるという。
本当に届くの?利用者が書く手紙の住所は間違いだらけ
ユキコさんはこう続ける。
「郵便番号のケタ数が少ない手紙が多いですね。
5ケタならまだマシで、いまだに3ケタの郵便番号を書いている方もいらっしゃいます。
他にも、『それで届くの?』と思ってしまう宛先を書いているケースがしょっちゅうあります。
以前、送り先に『東京都豊多摩郡○○町』と書いている方がいて、私が、『東京にも“○○群”ってあるんですね。どちらなんですか?』と尋ねたら、『高田馬場って知ってる?高田馬場よ』と言うんです。
調べたら80年ぐらい前に豊多摩郡はなくなっているのですが、その方が言うにはこの住所でちゃんと届くそうです」
個人情報などの問題から、利用者が出す手紙の宛先を施設の職員がいちいち調べるわけにはいかないもの。
かくして“難解な住所の手紙”が今日もポストに投函されているようだ。