毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、男性が女性からセクハラを受ける「逆セクハラ」という話題について紹介します。
頼りになって親切な“介護施設の先輩女性”
米・ハリウッドの大物プロデューサーから、某市町村の市長・町長など、セクシャルハラスメントで告発される事件が相次いでいる。
これらはいずれも男性が女性に対してセクハラを行ったものだが、近年では女性が男性に対してセクハラ行為をする「逆セクハラ」という単語も生まれている。
都内の介護施設で働く30代の男性・イワタさんも、職場で「年上女性」に悩みを抱える一人だ。
イワタさんが語る。
「私が働いている施設の場合、スタッフの8割以上が女性で、その大半が私より年上の方ばかりです。彼女たちは、年齢的にも息子ぐらいの私を、文字通り“子どものように”可愛がってくれています。
私は一人暮らしをしているのですが、病気で休んだ時に、ご飯を作って家まで持ってきてくれた人もいましたし、誕生日には『ママたちより』と書かれたプレゼントをもらったりしました。
まだ何も分からなかった新入りの私に、仕事を一つ一つ丁寧に教えてくれましたし、利用者のご家族との付き合い方が分からなくてトラブルになりかけた時も、間に入ってくれてとても助かりました。
彼女たちには感謝してもしきれません。しかし彼女たちが集まると、私は絶好のからかいのネタになるのです」
彼女たちと1対1でいる時は、「頼りになる良い先輩」なのだが、休憩室や喫煙所などで「女性数人対イワタさん」という構図になった時、必ず「セクハラでは?」という質問が始まるという。
これはコミュニケーション?逆セクハラ?
「まずは『彼女はいるの?』という質問です。そして立て続けに、『なんでいないの?』『いつからいないの?』『いたことあるの?』と、女性関係について根掘り葉掘り聞かれ、後は『そんなに若いのに』『ムラムラした時はどうしてるの?』『ウチの娘で良ければ……』みたいな流れです。
先輩女性たちと話す機会があると、同じような内容がしょっちゅう繰り返されます。
飲み会では『触っていい?』と言って、体をペタペタ触ってきたり、しなだれかかってくる人もいます」
これは、介護業界では圧倒的に女性が多いことも関係している。
厚生労働省が2014年にまとめたデータによれば、介護職員の男女比は、男性の23.3%に対し、女性は73.0%(無回答のものがあったため、合計が100%にならない)で、その差は3倍以上。
訪問介護員については、男性の7.0%に対し、女性は88.6%と、圧倒的に女性が多い。
イワタさんはいう。
「彼女たちに悪気がなく、冗談だというのが分かっているので、適当に聞き流しているのですが、一度、自分の母親より年上の女性に『胸元を見てたでしょ』と言われた時は、かなりムッとしてしまい、『本当に見てませんからっ!』と、言い返してしまいました。
ただ、『ムキになっちゃって』と、さらにからかわれただけだったんですが……」
イワタさんは、コミュニケーションの一環として「逆セクハラ」をあまり気にしていないものの、世のセクハラのニュースを聞く度に、自分の身を女性に置き換えて、憤っているのだそう。
介護業界には、男性利用者から女性スタッフへのセクハラという問題があるが、男性スタッフもセクハラとは無縁ではないようだ。