毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「料理がまったくできなくてもヘルパーになれる?」という話題について紹介します。
訪問ヘルパーが“料理できなければならない”は建前?
訪問ヘルパーとして働く際、多くの人が不安を抱くのが料理。
「洗濯や掃除はできるけれども、料理はどうしても自信がなくて……」という人は、ホームヘルパーになることはできないのか? どの程度料理ができなくてはいけないのか?
都内の下町の事業所で働くベテランスタッフのイノウエさんが語る。
「“建て前”からいえば、ヘルパーは料理ができなくては困ります。利用者の身の回りのお世話をするうえで、“食べる”というのは非常に大切なこと。サービス内容に料理が含まれている場合、それを提供できなければヘルパーとして失格です。
栄養のバランスを考え、利用者の状況に応じて食べ物の大きさや固さを調節し、味付けや味の薄い・濃いも好みに合わせ……、しかもそれを時間内にやらなくてはいけません」
これだけを聞くと、普段自炊をしている人でも、「私にできるかしら」「そんなに手際よくやるなんて」「口に合うかどうか」と不安になってしまうが、イノウエさんも言うように、それはあくまでも“理想論”。現実的には、それほど心配をする必要はないようだ。
できないことよりも学びたい意志が大切
イノウエさんは、こう続ける。
「私は、料理が苦手だっていう新人には、『おひたし、煮物、味噌汁を覚えて』と言っています。お年寄りは圧倒的に和食派ですし、これなら大きなミスもないでしょうから。
ウチのスタッフの中にも、冷奴をまるまる一丁と、出来合いのおでんを出していた子がいます。
毎回、豚コマと玉ねぎとジャガイモと人参を切って炒め、
カレーとシチューと肉じゃがをローテーションさせていた子なんかもいましたね。いろいろとひどいエピソードはあります。
本当に全然料理ができなくて、『見かねた利用者が教えてくれた』なんていう子もいました。
お金を支払うべきはどっちなの、っていう(笑)。けれどもその子は利用者からとっても気に入られてました。
面接の時に、『料理が苦手なんですが……』と、正直に告白する方はよくいらっしゃいます。
料理以外にもヘルパーの仕事はいっぱいありますし、料理がどうしてもイヤだというなら、生活援助でなく身体介護をやるという手もあります。正直に申告すれば、きっと対応してもらえると思いますよ」
イノウエさんの事業所では、どうしても料理ができないという新人には、ベテランスタッフが簡単料理教室を行っているのだそう。
たとえ料理ができなくても、できないことを正直に述べ、学びたいという意志があることをアピールすれば、問題はなさそうだ。