毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「不用意な一言がまさかの失言に?!」という話題を紹介します。
(ケース1)愛犬家の利用者さんに「犬のエサ」
「お酒を飲んで」「イライラしていて」「寝不足で頭がボーッとしていて」──状況はさまざまだが、誰でも一度や二度は意図せずに失言の類を発してしまったことがあるはずだ。
介護の仕事も、人と人とのやりとりが基本なだけに、不用意な一言で利用者の気分を害してしまうこともあり得る。
都内の訪問介護事業所で訪問ヘルパーとして働くマヨさんも、うっかり失言をしてしまった介護職の1人。
マヨさんは自身の失敗談をこのように語る。
「80代の女性の方のお宅に伺った時のことです。その女性は大変上品な方で、身なりもきちんとされていて、お家も広々とした豪邸。一人暮らしの彼女の家には犬が1匹いました。
丁寧な挨拶を交わし、私の仕事の様子をにこやかに見つめていた彼女ですが、帰り際に私が『犬のエサが……』と話すと、みるみるうちに表情が険しくなったのです。
『“犬”じゃなくて“ワンちゃん”でしょ!!それに、“エサ”じゃなくて“ご飯”!!!』と、猛烈な勢いで怒鳴られてしまいました」
「犬」「エサ」という言い方が、愛犬家の女性の逆鱗に触れてしまったのだそうだ。
この時は、マヨさんがすぐにお詫びをし、女性も自分の態度が行き過ぎだったことを認めたため、大事にはならなかったという。
(ケース2)男性利用者さんに髪の毛の話
マヨさんと同じ事業所で働くヘルパーのレイコさんは、自らの失言により、80代の男性の利用者から“クビ”を宣告されてしまったそうだ。
「利用者の方と雑談をしていて、『最近雨が多くてイヤですね』という当たり障りのない話をしていたんです。
『足元はビチョビチョになるし』『タクシーが捕まらないし』といった話の流れの中で、私が『髪の毛が多いので、雨の日は髪がまとまらなくて大変なんです』と言った時に、利用者さんが明らかにイラッとしていました。その男性はいわゆる“ツルツル”だったのです。
私は、謝るべきかどうか悩んだ末、さり気なく話題を変える方法を選んだのですが、間違いだったようです。
後日『大変不愉快な思いをした』との連絡が会社に入り、交代を命じられました」
不用意と言えば不用意だが、悪気がないだけに、レイコさんの事件は気の毒のような気もする。
(ケース3)まさかの理由で名前の話はNG
一方で、働く側にはまったく過失がないようなケースに遭遇したのが、神奈川県の訪問介護事業所でヘルパーとして働くヒサコさんだ。
「ある時、私が新たに担当することになった女性利用者さんの名前が、超有名女性芸能人と同姓同名だったのです。
挨拶を交わし、仕事を終えた後、そのことに触れると、女性は『私、あの人大嫌いなのよ! 二度とあの人のことは話さないで!!』と、かなりの剣幕で怒ってしまいました」
会社に戻ってそのことを報告し、「会う人会う人、必ずそのことを言われるので、ウンザリしているんじゃない?」という結論に達したヒサコさん。
彼女はクビにされることはなかったが、引き継ぎの際には必ず「同姓同名の芸能人の話題は厳禁」と書くと決めているそうだ。
利用者の“逆鱗”も十人十色、必要な対応策も人それぞれなのかもしれない。