毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「悲しみの対処法」という話題について紹介します。
“死”に対する免疫がなく、悩みすぎるヘルパーも…
介護という仕事は基本的に年配の方が相手。長い間お世話をして親しくなった利用者とも、いずれはお別れする瞬間がやって来ることもある。
介護に携わる者にとって、利用者を思う気持ちは何よりも大切だが、時にはそれが少々行き過ぎてしまう者もいるようだ。都内の訪問介護事業所で働くハセガワさんがいう。
「ウチの訪問介護事業所の利用者数はおよそ100人ですが、年に何人かはお亡くなりになります。我が社の規則では、ホームヘルパーが利用者さんのお通夜やお葬式に出ることは禁じており、代わりに会社がお花を送ることになっています。
中には、別れの悲しみに暮れてしまうヘルパーもいますが、やはり経験の浅い、若いヘルパーに多いようです。
亡くなった方とはまったく別のお宅で利用者さんのお世話をしている時に、ふいに悲しみに襲われ涙を流してしまったり、『あの時、もう少し優しくしてあげればよかった』と、後悔の念に囚われたり、不眠に襲われたりといったケースが実際にありました。
若いヘルパーの中には、人生で1度も別れを経験したことがないまま介護の仕事に就いた子もおり、“死”に対する免疫がないのが大きな理由だと思われます」
利用者が亡くなったショックを抱える介護職の話を聞いてあげて
そのため、ハセガワさんの会社では、利用者との別れにショックを受けたスタッフに対するケアを、専門のスタッフが行っているそうだ。
「ヘルパーが利用者さんとの別れで“悲しみ”や“後悔”を感じている場合は、専門のケアスタッフが時間を割き、話を聞くようにしています。
具体的には、その利用者との楽しい思い出、どんな気持ちで接していたのか、何をしている時に思い出してしまうのか、といったことです。ショック症状はそう長く続くわけではないので、2回カウンセリングを受けた例はありません」
一方で、精神的なショックから不眠に悩んでいる場合は、対応は異なるという。
「不眠状態が続くと体調不良に陥るのは時間の問題ですし、寝不足による不注意で、訪問先で事故を起こす可能性もあります。
ですから、不眠に悩んでいるヘルパーには、話を聞くだけでなく、提携しているクリニックと連絡を取り、睡眠導入剤を処方してもらうようにしています」
ただし過去には、新人の女性ホームヘルパーから、「全然悲しみが沸いてこないんですけど、私っておかしいんでしょうか?」という相談もあったのだとか。答えに窮した先輩スタッフが、「別にいいんじゃない」と返すと、その話はそれっきりになったそうだが、新人の女性は変わらずヘルパーの仕事を続けているという。
ハセガワさんは「利用者さんとの別れで何も悲しみを感じないのも困りますが、ショックを受けすぎるのも困りもの。1人で悩まないで相談してほしいですね」と、語っている。