毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「人それぞれ、寝床もいろいろ」という話題について紹介します。
よく眠れる環境は、人によって違う?!
人の一生を語る際によく使われるのが、「人生の3分の1はベッドで過ごす」というフレーズ。
世の中には多くの健康法があるが、睡眠不足ほど健康を害するものはないことは、誰もが身をもって経験しているだろう。
とはいえ、ぐっすり眠れる方法は人によってまちまち。
ホームヘルパーとして10年以上の経験を持つフクダさんは、訪問先のお宅で、数々の“ものすごい寝床”を見たことがあるという。フクダさんがいう。
「よくあるパターンは、不衛生極まりない寝床ですね。
布団を買ってから一度も干したことがなかったり、十数年間一度もシーツを替えていなかったりといったケースもあります。
“こげ茶色のマットレスなんて珍しいな”と思って洗ったら、実はもともと白だったということもありました」
訪問先で見た驚きの寝床、それはベッドではなくて……
衛生状態に関して言えば、もはやちょっとやそっとのことでは驚かないというフクダさん。ただ、先日ある男性利用者さんのお宅で見たベッドには驚かされたという。
「その利用者さんの自宅には考えられないほどたくさんの物がありました。
いわゆる“ゴミ屋敷”とは少し違いますが、本、古新聞、雑誌、レコード、CDがとにかく大量にあって、部屋はもちろんのこと、廊下、お風呂場、洗面所、キッチン、トイレ、玄関にまでうず高く積み上げられています。
話を聞けば、奥さんや子どもはその状態に呆れて、かなり前に出ていってしまい、別に部屋を借りているとのことでした。
驚いたのは、男性が寝ていた“ベッド風のもの”です。
ある日、男性が寝ている部屋を掃除することになり、掃除機がけするためにベッドの下をのぞこうとすると、笑いながら『そこは掃除機をかけなくていいよ』と言われたのです。
男性に促されてベッドをよく見ると、ベッドだと思っていたものは、全集などの本を積んだもの。
その利用者さんは、本を重ねた上にマットレスを敷いてベッド代わりにしていました」
それでは確かに掃除機はかけられないはず。本好きなら本の上に寝るのは抵抗がありそうなものだが、逆に良い夢が見られるのか……。
女性利用者さんが寝ていたのは、〇〇の上!!
フクダさんによると、ある女性利用者さんも、変わったベッドで寝ていたそうだ。
「訪問中に、車椅子へと移乗介助していた時のことです。
布団がずり落ちて、下から現れたのはなんと、みかん箱でした。
女性はみかん箱を4つ置き、その上に板を敷き、さらにその上にマットレスや布団を敷いて寝ていたのです。
生活が苦しそうな方なら大して驚きませんが、その女性は豪邸に住んでおり、家にある調度品も高価そうなものばかり。ベッドなどいくらでも買えるだろうに、どうしてみかん箱のベッドに寝ていたのか不思議で……」
フクダさんは、3年以上その女性利用者さんのお世話をしたが、見てはいけないものを見てしまったような気がして、最後までみかん箱のことは聞けなかったのだそう。
ただ、そのことを自分の母親に話すと、母親は少しも不思議そうな顔をせず、「お金持ちは見えない所にお金はかけないのよ」と、即答したそうだ。
さまざまな人の生活や価値観を垣間見る瞬間があるのも、訪問介護の仕事ならではなのだろう。