システムエンジニアから営業職、そして介護の世界へ。Tさんは、大きく転身しました。しかし、これまでの職場とは活気がまったく違うことに戸惑って……。今回は職場改善に奮闘するTさんの姿を追います。
*T・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Sさん(36歳)の転職経験
大学卒業後、就職せずに2年間バイト生活
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技術者派遣会社に就職、プログラマーとなり、のちにシステムエンジニアへ
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事業縮小のため本社に戻り、営業職に
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ハローワークでホームヘルパー2級を取得
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特別養護老人ホームに就職。6年間勤務する間に介護福祉士、ケアマネジャーの資格を取得
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2015年春より系列の居宅介護支援事業所に異動し、ケアマネとして勤務
リスクマネジメントを任され、会議を開くけれど…
勤務することになった社会福祉法人は、事務長の理念がすばらしかった。利用者さんの尊厳を守り、介護職は”お手伝いさん”ではなくて、自立を支援するのだというところもはっきりしていました。この事務長がいる職場ならやりがいが持てるだろうと思って、入社した、という経緯もありました。
しかし、現場に配属になったら、そうでもなかったのです。事務長が掲げていた理念など、ちっとも反映されていない。看護師の意見が強くて、「事故があったらどうする?」「転倒して骨折させたら家族にどれだけ批判されるか」と、少し歩行ができる利用者さんでも、「車椅子を使おう」となっていました。これでは、すぐに歩けなくなってしまいます。
一方、歩いてしまう人は見守りが徹底していないので、フラフラとよろけて危険です。「車椅子にのせろ」という医療関係者と、無防備に歩かせてしまうベテラン女性の介護士と、方針がバラバラで、これでは新人は戸惑うばかりです。日によって言われることも違い、何が何だかわからなくなります。
僕自身も、不満を持ち始めました。すると、主任が察して、「フロアのリスクマネジメントをやってくれないか」と言ってくれました。
そこで、まず、これまでの報告からヒヤリハットの事例を洗い出し、どんなことが危険につながるのか、どう予防し、対策したらいいのかを導き出すことにしました。手書きの報告書から何年か分、1000件分もの事例を打ち込み、分類していきました。
通常の業務のほかにやるので、残業も増えるし、体もきつかった。でも、利用者さんの自立を制限するかのように車椅子にのせているのはしのびなかったので、使命感を感じて、事例のまとめをしていきました。それらをもとに会議を開き、同じことを繰り返さないように、と注意喚起をしていたのですが、わかってくれない人もいました。少しずつ成果は出ていましたが、もどかしさもありましたね。
その間、介護福祉士資格の受験の要件を満たしたので、介護福祉士の試験を受けて、合格しました。さらに、ケアマネジャーの試験を受けることも目標に置き、フロアの不徹底ぶりに腹を立てすぎたり、意欲をなくしたりしそうな自分に、折り合いをつけていました。長く勤めるための自衛策ですよね。
自分がホームのケアマネジャーになってはどうか
看護師や管理栄養士、リハビリやケアマネとの連携を取るようになり、内情もわかってきました。そうすると、ケアマネのずさんぶりがまた、気になり始めました。
たしかにうちの法人は利用者さんの人数が多く、ケアプランを作るのも大変です。しかし、フロアにも降りてこないで、つまり利用者さんの現状を目で見て肌で感じることもなく、前回の計画の上書きでどんどんケアプランを作り続けている姿勢に疑問を持ちました。
「現場では『自立支援』なんてやってないじゃないか。」そう口走ると、「なんでそんなにいきがってるの?」などと鼻で笑われたり、ため息をつかれたり。意欲を持って利用者さんに向き合い、QOLをよくするために行動するのが当然、と思っていても、周囲の空気に押し返されてしまう――。
現場がわかる自分が、ホームのケアマネジャーになれば、介護の仕事を楽しめる現場にすることができるのではないか。そう思いつつ介護士を続けていました。
次回は、別な仕事に心を動かされるTさんをお伝えします。
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