華やかなアパレル業界から、介護の世界へと、異色の転身を遂げたSさん。社会福祉士、精神保健福祉士の資格を取り、最初から信頼されてポジションを得てきました。けれど、勤務先にはいろいろと思うところが……。これまでのエピソードを追いながら、Sさんにとっての転職の意味を、4回に分けて語っていただきました。
*S・Yさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
S・Yさん(35歳)の転職経験
服飾系大学を卒業後、大手アパレルメーカーに就職。6年半勤務
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在職中に夜間の福祉系大学に通い、社会福祉士資格を取得。ヘルパー2級も取得した
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アパレルメーカー退職後、すぐに派遣で1年間、生活相談員。その間に精神保健福祉士資格取得
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大手介護事業者のデイサービス生活相談員として就職、3年半勤務
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社会福祉法人の准職員として2年8カ月勤務。その間にケアマネジャーの資格取得
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住まいに近い地域包括支援センターのケアマネジャーに転職
服飾専門の大学のほか専門学校にも通って
ファッションに興味があり、アパレル関係の仕事に就きたくて、高校卒業後は、服飾系の大学にすすみました。バイヤーの仕事に興味があったので、より専門的な知識を学ぶために、服飾専門学校にも通ったんです。
服に興味を持ったのは、母親が服飾関係の仕事だったこともありますね。アパレルの仕事の楽しさを、母はよく語っていました。
専門学校卒業後は、念願かなって、大手アパレルメーカーに就職しました。うれしかったですね。バイヤーになるには、販売の経験を積んでベテランになることが条件のようなもの。まずは、販売職として仕事を始めました。
販売そのものも、楽しかったんですよ。お客様と話してお好みを知って、ふさわしい服を選んで差し上げることが好きなんですよね。タイプ的には、「積極的にどんどん売る」というのではなくて、お客様の気持ちに寄り添って選んでいくうちに売れるタイプ、でしたかね。今思えば、入居者のご家族の相談にのる老人ホームの相談員と、似たようなコミュニケーションを、当時もしていたのかもしれません。
アパレルを長く続けるのは大変かも…
中途採用の人が多い職場で、みなさん仕事にはプライドを持っていました。販売職には、ノルマや競争があります。お店としても、一定の売上を上げないといけないので、ピリピリとした緊張感がありましたね。
私は新人で、何もわからないのに、そこそこ売れていたので、ちょっとした嫉妬や、ライバル意識を持たれることもありました。自分自身は「洋服が好き、お客様とお話して、似合う服を選ぶのが好き」というような単純な思いで働いていましたが、「好き」だけではすまされない空気がありました。
お客様は徐々に増え、販売職としても認められましたが、3年ぐらいたつと、「向いてないのかもしれないな……」、という思いが強くなってきました。まわりからは、「ちゃんとノルマは達成しているんだし、問題ないじゃない。いずれバイヤーにもなれるわよ」と言われるのです。でも、40代になっても続けていけるのか、と考えると、わからなくなってしまう。
「ファッションの最先端」を目指すことに、いつまでも興味を持っていられるだろうか? 「人生には服よりも大切なものがある」なんて思い始めるんじゃないか? もし将来、バイヤーになれたとしても、売上をめぐる自分との闘いは、避けることができません。それに耐えていけるんだろうか? いっそ、洋服から遠く離れた仕事を選んだほうがいいのかな? と。モンモンと悩むのですが、なかなか答えが出ません。そんなとき、参考にするのは、やはり母の生き方でした。
母は結婚し、私を産んでからは、服飾の仕事を辞めて専業主婦となりました。その後、民生委員として、地域の高齢者たちの家を訪ねては、支援をしていました。ヘルパー2級の資格も取り、「困っている方がいたら、助けないとね」とよく語っていました。たまたま社会福祉士の資格を取得して相談員をしていた友人もいて、介護業界で働くことも、イメージがつきました。いつしか、「介護業界で相談員として働くのもいいんじゃないか」と思うようになって。「よし、私も社会福祉士の資格を取ろう」と決心しました。
そこで、資格を得るために、福祉系の大学に通うことにしました。夜間や通信でもよかったので、私はアパレルの企業をいったん退職し、非常勤の形で再雇用してもらい、夜間の福祉系大学に通いました。二足のわらじを履くのはちょっと大変でしたが、受験資格を得て、資格試験も合格し、晴れて社会福祉士となりました。
周囲の人達は、「180度違う仕事だね!」とびっくりしていたようです。でも、自分の中ではぜんぜん違和感はありませんでしたね。洋服が好きで、人の話を聞くのも好き。服は趣味で買ったり着たりすればいい。これからは、人の話を聞くのを仕事にして、よりよい生活を送っていただく手助けをしよう。そんな気持ちで、介護業界に自然に入って行きました。
次回は、Sさんの新人相談員としての奮闘ぶりをお伝えします。
*S・Yさんの「私が転職した理由」…1回目、
2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
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