介護業界は、他業種から転職してきた人が多いですが、Hさんの場合はユニークです。高校を卒業後、上京し、メンテナンスの仕事に就いたものの1年で退職。以後、スポーツ用品店の店員、宅配のドライバー、そしてパチプロ。変化に富んだ経歴で、介護職にたどり着きます。しかし、やってみると、「介護の仕事が天職」と思えるそうです。どんな経緯で今の心境にたどりついたのか。4回に分けてお伝えします。Hさんのお話を聞いていると、人生に転機が多いのは悪くない、と思えてきます。
*H・Tさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
H・Tさん(40歳)の転職経験
工業高校を卒業後、上京してメンテナンス会社に就職
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1年で退職。地元のスポーツ用品店で3年間勤務
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東京に再び上京。宅配ドライバーとして8年勤務
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ホームヘルパー2級を取得。介護職に踏み切れず3年間パチプロ生活
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東京近郊のグループホームに就職。4年間勤務
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結婚・転居のため都内の高級有料ホームに転職。2年間勤務
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派遣会社に登録し、有料ホームの夜勤専門勤務をするが、3ヶ月で退職
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契約社員として、夜間の訪問介護職員に。ケアマネジャー資格を取得
高卒で就職した会社をわずか1年で退職
今から20年以上前、愛知県の工業高校を卒業する頃は景気がよく、優遇される仕事はたくさんありました。学校から紹介された都内企業のメンテナンスの仕事も、19歳がもらう給料としてはすごくよかったですね。事務職は最初から除外でした。
今でもそうなんですが、机の前にすわって1日過ごすなんて、考えられない。体を動かす仕事が向いているんです。そのメンテナンスの仕事は、いろいろな企業の機械設備をみるので、あちこち出かけることも楽しそうでした。また、東京への憧れもありましたし、迷わず就職を決めました。
仕事自体は、順調でした。不満もありませんでした。でも、なにしろ、東京での遊びが楽しすぎて(笑)。アフターファイブは毎日街に繰り出し、遊ぶので、翌朝出勤するのがしんどいんですよね。すると、だんだん仕事をするのがめんどくさくなってしまって、1年で辞めてしまいました。今思えば、この最初の仕事が一番待遇がよかったんですよ。給料はいいし、福利厚生はしっかりしているし、キャリアプランも立てられる。なのに、やめてしまったのは、若気の至りですねぇ。後悔しています。
若くてお金もなく、会社の寮に入っていたので、辞めてしまうと、東京にいられなくて、実家に帰りました。両親は、「何をやっているんだ」と言いながらも、地元に帰ってきたことを喜んでくれて。だから地元のスポーツ用品店に正社員として就職し、こちらで結婚でもするか、と最初は思っていました。
けれど、一度都会生活を味わってしまうと、地元の生活が退屈で(笑)。スポーツ用品店で3年働いた後、「やっぱり東京でもう少しがんばってみるわ」と親に言い残して、また東京に舞い戻りました。
配送業より、資格を得て働く仕事がいい
お金がないので、今すぐ仕事をしたい。となれば、普通自動車免許を使って軽トラックで回る配送業だろうと思い、さっそく面接を受けて、仕事を始めました。基本給のほかに、配達するごとに歩合があり、手早く配送できるかどうかが給料の鍵になります。
最初の頃は、毎月の給料の伸びが楽しくて、がんばっていました。でも、30歳を過ぎるとだんだん体力との闘いになりますよね。炎天下の配送も、寒風の中の配送も辛く、「この仕事、いつまでやるんだろう」と不安になってきました。年配の配送員は、腰痛がひどいと苦しんでいる。支店長などの管理職になるには、嫌いな事務系の知識が必要ですし、経理ができないと難しい。ということは……将来の自分を、その年配の配送員に重ねてしまいます。
考えてみれば、運転免許以外、なんの資格もない。自分にはなんの取り柄もないように思えてきます。何か資格を取れば、もう少し自分に自信を持てるんだろうか――。そう考えたときに、母親と姉の顔が浮かびました。ふたりとも介護の仕事をしていて、姉はケアマネジャーの資格を持っています。姉は地元で意欲的に働き、利用者さんにも慕われていました。
失業保険をもらいにハローワークへ行くと、無料でホームヘルパー2級(*現在は介護職員初任者研修がこれに準じる)の資格を取れるとわかりました。資格取得後は、就職先も紹介してくれそうです。「これは、取るっきゃない」と思って、研修を受けて修了したのですが、紹介してくれた特養にどうしても行く気になれなくて。実習で体験した特養の忙しさを思い出したら嫌になってしまったんです。それで、結局は紹介も断ってしまいました。
次回は、パチプロとして生きるHさんの悩みや、人生の転機についてお伝えします。
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