老人ホームの仕事はやりがいがあり楽しい。けれど、子育てがまだ終わり切っていないA・Eさんにとって、夜勤は身体への負担が大きいものでした。
それなら夜勤のないデイサービスに転職すればいいだろうと思ったのですが……。思惑ははずれてしまいます。
*A・Eさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
A・Eさん(57歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…20年
●介護の仕事に就く前…手芸作家、主婦
●介護業界での転職回数…3回
●いままでの勤務先…訪問介護事業所、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、デイサービス、福祉系専門学校
●保有資格…介護福祉士、介護教員
デイサービスなら夜勤はないから…
自宅では家事や子育てをこなしながら、勤務先の特別養護老人ホーム(特養)では夜勤をして利用者さんのことも精一杯ケアをする。そんな生活が、自分の体に負担をかけていたのだな、としみじみと思いました。
まだ更年期には早い時期でしたが、女性の身体はホルモンバランスが崩れることで、心までいつもと違っていくことも感じていました。
理想のケアをしたいと思っても、身体が動かないし、気持ちもついていかないと感じて――。一度、仕事を休もうと決意したのです。
ここでは正職員だったので、退職金や失業保険ももらい、復帰はそれほど急ぐ必要がありませんでした。
たっぷり休み、治療もしたら気持ちも落ち着いてきて、また介護の仕事に戻ろうと思い始めました。
でも、やはり夜勤は大変だという実感があり、「それならデイサービスがいい」と考えました。昼間だけの仕事なら、家族にも負担は少ないはずです。
今回も、前職の特養のように、オープニングスタッフとして働きたい。ハローワークに行き、家から近くて条件もいいデイサービスを探しました。
そんな中で「ここがいい」と思ったのは、だれもが知っているような大手メーカーが新しく始めたデイサービス。
介護保険制度が始まり、これまで社会福祉協議会や自治体、社会福祉法人の参入しかほとんどなかった介護業界に、一般企業が参入するようになっていました。
「介護はもうかる」という風潮があり、新規事業として、建設や家電業界の大手メーカー参入も珍しくなかったのです。
名の知れた会社の系列ですから、それはそれで魅力がありました。
大企業でもまれた上司であれば視野も広いだろうし、そんな人たちが運営する会社なら、面白いかと思って入社を決めました。
私は、生活相談員として採用されました。
企業運営だからか、売上目標が厳しかった
しかし、彼らは介護について、ほぼ素人です。
利用者さんへの接し方はもちろん、デイサービスの経営や事務についても、まったく知識がありません。たぶんそうだろうと思っていたことでもあるので、それはあまり気にしませんでした。
上司には、相談員である私が介護について説明し、私も事務や運営に関わりました。
本社であるメーカーの企業理念に基づき、消費者と同様、「利用者さんを大事にしながら、利用者本位の運営をする」という理念も築きました。
しかし、しばらくすると、その理念も少しずつ揺らいできました。
大手メーカーが大量に商品を作って流通させるのと違い、小さなデイサービスではこまごまと利用者さんのケアをしても、それほど大きな利益は上がりません。
売上目標に遠く届かないことがわかると、本社から利益目標の数字が示されました。
小さな事業所で、どれだけ努力してもそれほどの利益はありません。
上司はさまざまなサービスの打ち切りや人員配置の変化などを求めてきましたが、そうすればかえって利用者さんが離れていきます。
地域で悪い評判が立ったデイサービスほど、今後の運営が難しい。
そう説得し、いかにサービスを落とさずに運営していくか、頭を悩ませました。
一方で、立ち上げのメンバーは「こんなはずではなかった」と次々に辞めていきます。
相談員の仕事だけをしているわけにはいかず、自分も介護職員の一員として、送迎車の運転から入浴介助までしました。
坂道の多い地域だったので、車椅子での移動もひと仕事。
利用者さんを送ったあとは、請求事務もあれば会議もある。
出社したとたん、分刻みのスケジュールです。むしろ夜勤で利用者さんのケアだけ考えているほうがずっと身体が楽でした。
それでも、来てくれる利用者さんのために、なんとかがんばっていこうと思っていました。ですが、今度は甲状腺の病気になってしまい、やむなく辞めることになってしまいました。
この仕事が好きなのに、続けていきたいのに――。3年がんばるとついていけなくなる身体を呪いたくなるほどでした。
最終回の次回は、自分らしく介護の仕事に関わっていくAさんの様子をお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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