音楽が好きで、こだわりのあるレコード店で5年間勤務した後、介護業界に転職したYさん。自分の好きなことを仕事にすることの難しさと苦しさを体験し、自分にとっての仕事のスタンスを見つめ直したのです。そして「自分のため」より「世の中のため」の仕事をどう実現するのか。4回の連載で、Yさんの軌跡をたどります。
*Y・Yさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
Y・Yさん(34歳)の転職経験
音楽関連の専門学校を卒業後、一度は祖父の経営する会社に勤務
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横浜のレコード店にアルバイトから勤務を始め、契約社員として5年間勤務
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ヘルパー2級を取得し、横浜の特別養護老人ホームに正社員として5年間勤務。その間に介護福祉士の資格取得
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仕事のストレス解消として夜勤明けに長野の山に出かけることを趣味とする。次第に八ヶ岳へ移住を考える
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長野県で有料老人ホーム・グループホームを運営する法人に正社員として転職。現在はユニットマネジャーとして後進の指導も行う
自分の「好き」を潰される感覚に
高校時代から音楽が好きで、音楽関連の仕事をしたいと思い、専門学校に進学しました。卒業後はいろいろ考えた末、一度は祖父の経営する会社に勤めたものの、やはり「好きな音楽の世界で仕事をしたい」という思いは消すことができなくて。以前から通いつめていたレコード店がアルバイトを募集していたタイミングで祖父の会社を辞め、その店の販売員として働くことにしました。当初はアルバイト、3年後には契約社員として勤務しました。
レコード店は都内を中心に15店舗を展開するこだわりのある店。CDではなく、新品・中古のレコード盤を扱っています。ロック、ジャズ、ソウルなど、ジャンルはさまざまですが、セレクトがよく、音楽ファンの間ではよく知られた憧れの店。いつも好きな音楽に囲まれて仕事ができる環境が、うれしかったですね。5年間働く間には、販売だけでなく、中古レコードの買い付けも任されるようになりました。
ところが、音楽業界もCD、MP3とメディアが変わっていき、やがて、パソコンや携帯、スマホで音楽を聴くのが主流になっていって。音楽を「買う」という行為をしない人が増え、事業の雲行きが怪しくなってきました。そうなると、コアなファンがいるアーティストの作品より、オリコンやビルボードのトップ10にのぼるような、売れ筋のものばかりが店に並ぶようになって。こだわりのある店だったから働きたかったのに、むしろ自分の好きなことが潰されていくような感覚がありました。
一方で、売れなくても趣味を掘り下げていくようなお店も残っていて、そういう店が羨ましかったり。かといって、自分が店を立ち上げるほどのお金や熱意があるわけではない。そんな中途半端な自分にも嫌気がさしていました。
「好きなことを仕事にするのって難しい」と感じていた頃、皮肉なことに、「正社員にならないか」という打診がありました。けれど、店は少しずつ整理されていき、ひと月の売上が入社した頃の半分に。その時点で、やはり辞めようと決心したのです。
好きな分野で働くか、人のために働くのか
今まで5年間も自分の好きなことを仕事にしたので、次は視点を変えて、自分のためより、世の中のためになるような仕事をしようと決めました。ちょうどその頃、介護事業者の架空請求が、大きなニュースとして取り上げられていました。架空請求の背景のひとつに、介護業界には慢性的な人手不足があると知り、それなら、介護職になってみようと思い立ちました。
人手が足りないなら、経験のない自分でも採用してもらえるかもしれない。そう思ったのは正解で、介護の求人はたくさんありました。少し調べてみると、ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修に相当)を取得してこの世界に入る人が多く、その取得も、真面目に通えばほとんどの人が資格を得られるとのこと。世の中からは「介護職は仕事がきつい、給料が少ない」と認識されていました。
でも、これまでだって、給料が高かったわけではありません。もともと、基本的な生活ができれば、それ以上のことを望まないほうです。「好きなこと」を仕事にして、苦しんだのだから、「世の中のためになること」をやる、それでいい。きついかどうかは、やってみなければわからない。もし自分に仕事が合わなかったとしても、まだ20代半ば。リセットして別の仕事を目指すことも、いくらだってできる。失敗を恐れることはないと思いました。
ヘルパー2級は、ハローワークが主催する講習なら、テキスト代程度で受講できると言われました。が、なんとなく、ハローワークには行きたくないな、と思っていました。あそこは失業保険をもらうところ、というイメージが強かったんです。自分は失業保険をもらわずに、すぐに働きたいと思いました。できるだけ早く講習を受けて就職するには、民間の講習を受けて、スピーディに資格を取ろうと決めて、1カ月で取得。そして、並行して、インターネットの介護専門の求職サイトなどで情報を集めました。
サイトの情報で、介護事業者の合同説明会を開催していることを知りました。当時は介護業界についての知識が浅く、ヘルパー2級の講習でさらっと習っただけ。どこに就職したらいいのか見当がつきませんでした。なので、とにかく合同説明会に行ってみようと、足を運びました。ひとことで介護業界といっても、デイサービス、訪問介護、グループホーム、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど、いろいろな種類があり、それぞれに働き方が違うことが、会場で実感できました。
そして、ブースをいくつか覗いて話してみて、ここなら良い介護をするのではないか、と直感できた特養に就職を決めたのです。
次回は、特養で働き、人間関係にストレスを感じるYさんの状況をお伝えします。
*Y・Yさんの「私が転職した理由」…1回目、
2回目、
3回目、
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