入居者の生活全般をサポートしたいと思って、入居施設である有料老人ホームに転職。でも、想像していた仕事内容と違う!?こんなはずではなかった…。
ここでは、「介護付き有料老人ホーム」や「住宅型有料老人ホーム」に転職した先輩たちの失敗談を、介護求人ナビ編集部からのアドバイス付きでご紹介。せっかくの転職を失敗に終わらせないためにも、ぜひ参考にしてください!
《事例1》スタッフの人員に余裕がない。これじゃ私がめざす手厚い介護はムリ?
32歳/女性/明子
いろいろな介護施設で経験を積みたいと思い、転職。転職先に選んだのは、前職と同程度の入居者様がいる介護付き有料老人ホーム。でも、介護スタッフの人数は、前のホームより明らかに少ないんです。スタッフの人数が少ないので、利用者様より施設の都合や効率が優先。私は前のホームのような手厚い介護がしたいのに、他のスタッフに急かされ、流れ作業のような対応に。転職は失敗だったのかと悲しくて…。
《アドバイス》
有料老人ホームは、法人や施設ごとに特色があります。
たとえば、
●要介護度が高い方、認知症のある方を積極的に受け入れている施設
●医療やリハビリに力を入れている施設
●ホテルのような“おもてなし”を重視した施設 など
そうした施設の違いは、介護職の働き方にも大きく影響します。転職先を決める際、給与や待遇、勤務形態などの条件だけでなく、施設の特色にも注目しましょう。そして、さらにチェックしておきたいのが「職員の人員体制」です。
「3:1」や「2.5:1」などの数字に見覚えや聞き覚えはありませんか? これは、入居者に対して何名の介護職員を配置しているかを示したもの。「3:1」であれば、入居者3名に対して、1名の職員。「2.5:1」であれば、入居者2.5名に対して、1名の職員です。
職員の人員体制は、老人ホームの入居者に向けた資料(重要事項説明書)に記載されていますし、ホームページで公開されている場合もあります。
介護付き有料老人ホームの職員配置は、介護保険法により「3:1」以上と定められています。
「2」や「2.5」であれば、ゆとりをもった人員で介護をしていると想像できます。つまり、その法人が手厚い介護をめざしていると判断する目安になります。
なかには、介護職が介護の仕事だけに専念できるよう、清掃など介護資格がなくてもできる仕事は、外部に委託する施設もあります。このような取組の有無も、どんな働き方になるか想像する材料になります。
今回の場合、残念ながら、転職先はあなたが期待した環境ではなかったようですね。しかし、転職は失敗だったとあきらめる前に、施設長や上司に今後の運営方針や人員体制の考え方などを尋ねてみてはいかがでしょうか。「今後はスタッフをもっと増やす計画がある」など、長期的にめざす方向が、実はあなたの思いと一致するかもしれません。
それに、もともと転職の動機は他の老人ホームも経験してみたいということだったはずです。いまの環境のなかで、スキルアップにつなげられることはないか、考えてみてはいかがでしょうか。
また、今の職場の効率重視のスタッフは、たまたま、いままでそういった介護しか経験したことがないのかも。スタッフは、なんの疑問も持たずに働いているだけかもしれません。他のスタッフに、あなたがめざす介護を理解してもらうよう地道に働きかけることも、してみてはいかがでしょう?それぞれがめざす介護のかたちを話し合うことで、問題点や改善のアイデアが出てくるかもしれませんよ。
《事例2》転職先の住宅型有料老人ホームは、掃除・洗濯など身の回りのお世話ばかり。これって介護の仕事なの?
36歳/女性/としこ
デイサービスで働くうちに、もっと利用者様の24時間に寄り添った介護をしたいと考えるようになり、住宅型有料老人ホームに転職。しかし入職してみると、私の仕事は食事の準備や掃除、洗濯などの家事サポートばかり。身体介護は、併設の訪問介護事業所のスタッフの仕事だと、転職後に知りました。今の仕事内容では、やりがいが感じられません。
《アドバイス》
有料老人ホームは、主に「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」の2種類に分けられます。「介護付き」は介護保険が適用される「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設。基本的に、施設内のスタッフが、生活サービスも介護サービスも行います。
一方「住宅型」は、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていません。施設内のスタッフは食事・掃除などの生活サービスを提供しますが、排泄や入浴などの介護サービスは行いません。介護サービスが必要な入居者は、外部の法人と個々に契約して利用します。
つまり「住宅型」の有料老人ホームで、入居者に身体介護などのお世話をするのは、外部の訪問介護スタッフというわけです。そのため「住宅型有料老人ホーム」には、系列の訪問介護やデイサービスの事業所が併設する場合が少なくありません。
生活支援サービスだけの仕事内容に満足できないと感じるのなら、まずは上司に相談してみてはいかがでしょうか。住宅型有料老人ホームに併設する訪問介護事業所などに異動可能かもしれません。もし異動が難しい場合は、「介護付き有料老人ホーム」や「特別養護老人ホーム」への転職を検討してみるのも選択肢の一つです。
《事例3》敬語をいちいち直され、髪型まで注意される毎日。そんなにマナーが大事?
35歳/女性/まさみ
祖父母を介護したときのように心の通ったサービスがしたくて、有料老人ホームに転職。まず研修で学んだのが「おもてなしの心とサービス」。実際に働き始めると、上司だけでなく、入居者様やご家族のチェックも厳しくて…。敬語の使い方や食器の置き方から始まり、先日は、髪型にまで嫌みを言われました。介護技術には自信があるし、そこは上司も評価してくれているけど、敬語などの介護と関係ないことへのクレームが多くてうんざり。そんなに接客マナーって大事ですか?
《アドバイス》
有料老人ホームは、特別養護老人ホームなどの公共の福祉施設に比べて入居費用が高い傾向があります。なかには、入居金が数千万円というような高級ホームもあります。高級ホームの場合、入居者や家族は、一流ホテルやレストランの接客サービスに慣れた人たち。「マナーや敬語」はできてあたりまえ、と考えている人もいます。
また、老人ホームを運営する側も、高い費用に見合うよう、質の高い介護のほか、豪華な設備や、コンシェルジュのようなきめ細やかな対応を提供するケースが多くあります。敬語の使い方はもちろん、お辞儀の仕方や立ち居振る舞いまで高いレベルが求められるかもしれません。
しかし、有料老人ホームは高級なところばかりではありません。アットホームな雰囲気を大切にしているホームもあります。大事なのは、どんなサービスを提供しようとしている施設なのか、スタッフにはどんなスキルが求められているのかを事前に確認しておくこと。ホームページなどで確認するのはもちろん、面接で直接聞くことも重要です。
今、あなたが働く有料老人ホームは、高い接客スキルやおもてなしを売りにしているのではないでしょうか。であれば、その前提で契約した入居者や家族があなたに高いレベルを求めるのは当然なことと言えます。その施設で働き続けるなら、ある程度合わせていくことは求められるでしょう。
あなたは上司にも評価される確かな介護技術を身につけ、介護への思いもしっかり持っています。言葉遣いやマナーを注意されて悔しいと感じるのも、一般的な接客マナーは心得ているという自負があるからではありませんか? ならば今のあなたに、さらに高いレベルの接遇マナーが身につけば、まさに鬼に金棒です。どんな施設でも通用する介護職となれるはずです。
先輩達の接遇もよく観察して、良いところをどんどん取り入れてみてはいかがでしょうか。
また、介護の接遇に関する本を参考にしてもいいかもしれません。
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『イラストでわかる介護・福祉職のためのマナーと接遇』
⇒
『すぐに使える介護のための接遇講座』
それでも接遇重視の介護に納得がいかないときには、あらためて自分が介護の仕事で大事にしたいポイントを整理してみましょう。あなたがめざす「心の通ったサービス」を突き詰めて考えていけば、それが今の職場で実現可能なのか、転職すべきかがはっきりしてくるかもしれません。
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