福祉の専門学校を卒業後、特養に就職したK・Jさん。4年半勤務しましたが、この職場ではやりたい介護は叶わない…と不満を募らせていました。そして同僚のミスに怒鳴り散らす上司に嫌気がさし、ついに退職を選びます。次に選んだ道は、介護職ではなく、福祉用具を販売する会社の営業マンでした。
*K・Jさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
K・Jさん(28歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…7年
●介護の仕事に就く前…福祉系の専門学校
●転職回数…2回
●いままでの勤務先…特別養護老人ホーム、福祉用具販売の営業(訪問介護も兼務)、小規模多機能居宅介護
●保有資格…介護福祉士
広く社会を見渡せる仕事環境がほしい
転職先を探すときに、一番に考えたのは、自分が理想とする介護ができる環境かどうか、ということでした。理想とする介護とは、「その方が持っている残存機能を最大限に活用し、その方らしく生きることをサポートする」ということ。前の職場のように、オムツを替えて食事や入浴をさせてそれが精いっぱい。というのではなく、利用者さんがやりたいことが何なのか、しっかりと聴いて受け止める余裕がほしい。そして、組織全体で全力で利用者さんをサポートする体制ができていてほしい。そこに着眼して、転職先を決めました。
また、小さないざこざで雰囲気が悪くなるような職場も避けたいと思いました。前向きに仕事に取り組むには、スタッフがうまく連携できていないといけない。足を引っ張り合うような不毛な職場は、もうたくさんだと思いました。
次に就職するのは、「企業」がいいと思いました。大手企業の会社員になった高校の同級生と話していると、株価がどうとか、国際化がどうとか、ビジネスの最前線で世界を見ている、と感じます。自分は本当に小さな世界で生きてきたし、社会のことなんか、まだ何にも知らないのだと、感じることが多かったのです。
民間企業で、社会環境やビジネス環境を感じながら仕事がしたい。僕にとって、株式会社として福祉用具販売をしているこの会社が魅力的に思えました。居宅介護支援事務所、訪問介護ステーション、デイサービス、訪問入浴と、幅広く事業を展開している企業だということも、プラスに思えました。面接をし、合格すると、僕は特養に辞表を書きました。
福祉用具の職場は、すごく自分に合っていました。営業担当として、自社のケアマネジャーだけでなく、近隣のケアマネジャーさんのところに営業に行き、自社で扱う製品のPRに回ります。正直に言って、扱う商品はどの販売事業所でもそう変わりはありません。となれば、差が出るのは、営業マンの質です。相手にとって納得のいく仕事ができるよう、努力することの大切さを知りましたし、それがまた、仕事のテンションを挙げてくれます。
また、福祉用具をどう導入して、利用者さんにADL(*)の保持と豊かな生活を提供できるか。それを考え、プレゼンテーションするのは、まさに、理想の介護に近いものでした。もともと機械が好きで、特養にいるときも車いすの調子を整えたり、介護ベッドの動き具合を調整したりすることもありました。利用者さん宅に導入した福祉用具を、一番使いやすい状態で提供し、喜んでいただくことも、やりがいにつながりました。毎日、仕事に行くのが楽しく、ストレスはまったくない状態でした。
(*ADL=日常生活動作のこと。Activities of Daily Livingの略。「起きる」「食事をする」「排泄する」「移動する」など、日常生活で欠かせない基本的な動作を指す。)
このままではケアマネ受験ができない…
ところが、ひとつだけ、どうしても受け入れられないことがありました。
前の特養を4年半で退職しています。学生時代に卒業と同時に介護福祉士の資格を取ったので、5年の実務経験を経たら、ケアマネジャーの試験を受けて資格を得たいと思っていたのです。そうなると、介護の現場の仕事に就いていないので、半年分の勤務の不足が埋められません。そこで、系列の訪問介護ステーションでヘルパーとしても働き、資格を得られる実務経験を積むべく、がんばっていました。
ヘルパーをしたことで、利用者さんの自宅での生活に直接触れることができ、とてもためになりました。二つの仕事の掛け持ちは多忙でしたが、その多忙さもうれしく思っていました。
しかし、どういうわけか、企業側が「いくら訪問介護をしても、それをケアマネジャー資格を取得するための実務経験として認めることはできない」と言うのです。なぜ…? 事前に、確認しておくべきだったのですが、やはり納得できません。
何度か会社と話し合いの場を持ちました。居心地がよく、前向きに働ける職場だから、辞めたくなかった。話し合いで解決したいと思っていましたが、上司は自説を曲げてくれませんでした。
ケアマネになるのは、僕の大きな目標。いくら働きやすい職場でも、目標を捨ててまで従事する気にはなれません。何度か話し合い、失望し、また次の職場への転職を考え始めました。
次回は、また介護の現場に戻っていくKさんをお伝えします。
*K・Jさんの「私が転職した理由」…
1回目、
2回目、3回目、
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