今回は、大学の理系学科を卒業し、システムエンジニアや営業職を務めながらも、周囲の評価や仕事への満足感が得られず、介護業界に転職した男性の転職体験談をお送りします。もっとも介護に遠い履歴の人に見えますが、おそるおそる飛び込んでみた介護の世界で、ケアマネジャーにステップアップ。今年からは、新たな介護現場で力を発揮しています。自ら「特別な才能はない」と言い、人見知りで自己表現が不得手というTさん。現在に至るまでの道筋や心境を、4回に分けてじっくりお届けします。
*T・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
T・Sさん(36歳)の転職経験
大学卒業後、就職せずに2年間バイト生活
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技術者派遣会社に就職、プログラマーとなり、のちにシステムエンジニアへ
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事業縮小のため本社に戻り、営業職に
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ハローワークでホームヘルパー2級を取得
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特別養護老人ホームに就職。6年間勤務する間に介護福祉士、ケアマネジャーの資格を取得
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2015年春より系列の居宅介護支援事業所に異動し、ケアマネとして勤務
技術者なのに営業に回され、売上げが上がらない
理系の勉強が好き、実験がおもしろい、と思っていたので、大学は迷わず化学系の学部に決めて入学しました。しかし、いざ大学の化学を勉強してみると期待はずれで興味が持てず、学費稼ぎのバイトにばかり精を出してしまって。なんとか大学を卒業したものの、まともな就活もせず、そのままバイト先の飲食店でフリーター生活に入ってしまいました。
正社員になれるわけでもなく、気づけば20代も半ば近い。さすがにこのままではまずいと思い、友人が勤務するコンピュータの技術派遣会社に入れてもらって、プログラミングを一から学び、プログラマーからシステムエンジニアになりました。
システムエンジニアの仕事は楽しかったんです。けれど、会社の事業を縮小することになり、エンジニアを減らして営業を強化するとのことで、本社に戻され、営業部に配属されました。
営業……、本当にダメでした。一生懸命にお客様のところに行って商談しているつもりなのですが、まったく売上が上がらない。上司から「役に立たない」とハッキリ言われてしまって、挫折しました。けれど、生活もあるし辞めるわけにはいきません。とにかくエンジニアには戻れないとのことなので、他部署の営業職や、関連会社の営業職を転々としましたが、どこでも芳しい成績は上がりませんでした。
最後に勤務した山陰地方の関連会社では、3日で部長から「問題解決能力が欠如している」と厳しい言葉を浴びせられました。自分の行動のどこが問題なのか、どう改善すればいいのかを分析する能力や、それを今後に活かす実行力が低いと。具体的に「どこが悪いのか」をコンコンと言われ、とてもつらい気持ちでしたが、後で思えば、それも部長の親心みたいなものだったのかもしれません。「もっと社会人としてきちんとした仕事をしろ」と叱咤されました。
しかし、自信を失ったのも事実です。また、こんなに仕事で迷惑をかけているのなら、辞めるしかない、という気持ちにもなりました。会社には5年間しがみつきましたが、そろそろ潮時なのではないかと……。意を決して、ハローワークに行くことにしました。
高齢者に席を譲り、「介護職」にピンと来た
ハローワークに行く日。どんな仕事に就くかのビジョンもなく、ただハローワーク行きのバスに乗り込み、座席にすわると、目の前にお年寄りが立っています。当然のように席を譲ったのですが、とても喜ばれました。ささくれだった心に灯火が点ったような気持ちになりました。ああ、高齢者と接するっていいな、あれ、それなら介護の仕事はどうだろう……。
なにか、ストンと腹に落ちた気がしたんです。そして、大学生の頃に亡くなった祖父のことを急に思い出しました。おじいちゃん子で、かわいがってもらったのに、危篤で息を引き取るときに、おじいちゃんに一言も話しかけなかった。「目を開けて、おじいちゃん」と言えばよかったのに……。
ハローワークに着くなり、介護の仕事の求人について相談。「まずはヘルパー2級の資格を取りましょう」と言われてハローワーク主催の講座を受けました。講座を受けて知った介護の考え方にも衝撃を受けました。
「最後の時までその人らしさを大切に、生活の質を高める仕事。」
それは介護が必要な人だけではなく誰にも当てはまり、職場を変える力、自分の生活の質を高める力になる。
もう「これしかない!」と思いました。
資格を取ると、すぐに社会福祉法人を紹介してくれ、特別養護老人ホームの介護職として働くことになったのです。
次回は、職場改善に燃えるTさんの様子を伝えます。
*T・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、
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