ヘルパー2級の講習で介護の魅力を知り、この世界に入ってきたR・Uさん。しかし、職場の理不尽な人間関係や、必要以上にプライベートに関わってくる同僚などに翻弄されて退職することに……。前職で、正社員として出版社に勤務していた時との違いに驚きながらも、しかし、こんなことでやめたくない、自分がこの仕事で学ぶべきことは何だろうか……。Rさんは、新たに仕事に立ち向かいます。
*R・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
R・Uさん(58歳)の転職経験
大学卒業後、絵本の出版社で25年以上勤務。母の介護・死を経験し、激務もあって退職
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3カ月ゆっくりと過ごした後、40日間かけてホームヘルパー2級の資格を取得
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有料老人ホームにパートとして入るが、3カ月で退職
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デイサービスにパートとして1年勤務
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現在のグループホームにパートとして4年間勤務
9人とじっくり付き合うグループホームにひかれて
これまでは新聞の求人のチラシで、ごく近所の有料老人ホームやデイサービスを探して勤務してきました。でも、一度はハローワークにも行ってみようと思い、足を運びました。ハローワークの求人には、介護の仕事が多く、50代の私なら、やっぱり介護の仕事がいいんだろうな、と実感しました。
その中で、私の目を引いた求人がありました。認知症の方が入居するグループホームで、9人で1つのユニットを形成し、職員はその9人のケアをします。大人数の高齢者を相手にしていた有料老人ホームとも、デイサービスとも違い、今度は9人の入居者ときめ細かく付き合ってみよう。そんな思いで入職を決めました。
勤務は1日8時間、日勤だけで週4日。ここでも正社員で働く気はなかったので、体力を落とさない程度にやっていこうと思っていました。実際、そのグループホームの職員の85%は非正規。気後れすることはありませんでした。
この9人のユニットでの勤務は、おもしろかった!おひとりずつと、じっくりと付き合える喜びを知りました。また、私たちは家事介助もします。利用者さんを誘って「ごぼうのささがきをしてくださいませんか」と、一緒に調理をしたり、洗濯ものを一緒にたたんだり。認知症対応グループホームですから、こうした家事をしていただくことが、日常生活の維持や機能のキープに役立つわけです。でも、ぞんざいに「やってください」なんて言おうものなら、「私たちはお金払ってんのよ。なんで働かなきゃいけないのよ!」と反論されてしまいます。
ベテランの職員さんの促し方のうまさを見習い、自分流も加味して、なんとか楽しく家事をやっていただく。そこにおもしろさを見出しました。自分が利用者さんを下に見るようなことをしたら、必ず拒否されます。利用者さんに対する、「尊厳」が大事なのだと痛感しました。利用者さんは自分よりもずっと年上の方々です、人生の先輩です。敬う気持ちがなければ、心は通じません。ヘルパー2級の講習のとき、先生に習ったことが、今ここで生かされている気がしました。
そして、一緒にキッチンに立ち、味噌汁の味見をして、「今日の味噌汁は、ちょっと濃かったですね」と声をかけて微笑み合う。こんなところに、人生の幸せがあるんだ、と思いました。
介護の仕事のおもしろさに気付いて
私はずっと子育てをしながら、働いてきました。子どもが小さい頃は、保育園にお迎えにいった後は、時間勝負で夕食作り。いかに短時間で効率よく子育てや家事をするかを考えていました。そして、そんな時間に追われる生活が終わって、子どもたちがそれぞれ独立すると、今度は急に一人の時間が増えました。
…ゆったりした時間を他の人と共有する、私にはそんな経験が少なかったことに気づきました。
今、介護の仕事を通して、人とふれ合い、温かさを感じさせてもらえることが、しみじみとうれしく感じます。家事を丁寧にすること、人と丁寧に付き合うこと。その喜びを教えてくれる。介護の仕事のよさが、だんだんわかってきた気がします。
ああ、私はやっぱり、人間が好きなんだなぁと、思いました。出版社時代は、さまざまな人間関係に悩み、もう人と向き合う仕事はやりたくない、と思ったこともありました。けれど、人と心を交わし合い、何かその方々のお役に立つことが、結局、自分の生きがいなんだなぁと。出版社時代に、絵本の楽しさを子どもたちに知ってもらうためにあれこれ工夫したのと同じように、今、家事の楽しさ、生活の楽しさのヒントを利用者さんに投げかけ、一緒に楽しみながら、「生きていることっておもしろい」と思っていただく。なんだ、結局似たようなことをしているのだな、とも思います。それがわかっただけでも、介護の仕事に就いてよかった。亡くなった母が私をこの道に促してくれたことを、心から感謝しました。
最終回の次回は、介護の仕事にどう向き合うのか、その心の奥深い部分まで語っていただきます。
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