正職員として働くことをやめ、夜勤専門の介護士として、月10日だけ有料老人ホームに勤務するようになったRさん。ひとくぎりすると旅をし、人と会い、もがき、悩み、新たな仕事への模索も始めました。そして、もう一度介護の仕事を見つめ直す……。この期間は、Rさんの人生にとって、欠くことのできない、必要な時間でした。
*U・Rさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
U・Rさん(31歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…9年
●転職回数…4回
●今までの勤務先…特別養護老人ホーム、有料老人ホーム
●介護の仕事に就いた後に経験…居酒屋店員
●現在の勤務先…訪問介護事業所
●保有資格…介護福祉士
介護ではなく、旅の仕事に就くことはできないか
夜勤で月10日だけ介護の仕事をする中で、別の仕事に目が向き始めました。旅がこんなに好きなんだから、何らかの形で旅の仕事ができないか、という思いも強くなりました。
近年、大手旅行会社でも、障害のある方や高齢者の方を対象にした旅のツアーを開催することが多くなりました。そんな場所で、自分の介護福祉士としての資格を生かせるのではないかと思いました。まだ20代ですし、旅行業界に転職するのは可能だと思いました。旅行業に携わるには専門の資格もあったほうがいいのですが、それは旅行業界に就職してからでも取得できると聞きました。
旅仲間が増えると、旅の情報もたくさん入ってくるようになり、ますます介護業界よりも魅力的に思えてきました。当時の僕は、介護士としては今一つだったと思います。与えられた時間は一生懸命にやりましたが、利用者さんにとって夜勤職員はどうあるべきかなどを真剣に考えるという意欲はそれほど持てませんでした。
そもそも、夜勤の業務は非常に過酷でした。20人の利用者さんをひとりで担当していたのですが、トイレ誘導もあれば、起き出してきた利用者さんの対応もある。不穏で声を上げる利用者さんの部屋に入り、話しかけたり眠りについていただいたりと、休んでいる暇はまったくありません。4年間で5か所の夜勤を体験しましたが、どこも非常に忙しく、つらかった。倒れたこともありました。
それに、「この利用者さんには、こう接したほうがいいのではないか」などと改善できそうな点に気づいても、正職員でもないので、あまり言えない。業務の見直しも提案できず、ルーティーンをこなすのに精いっぱいで、仕事自体にやりがいはなかなか見出せませんでした。
友人の看護師に職場を紹介してもらって
しかし、旅の仕事に就くことも、容易ではありませんでした。旅行会社の人材募集はあるものの、行ってみるとピンと来ない。介護業界で、利用者さんと密な接し方をするのが当たり前だと思って仕事をしてきていると、旅行業界のお客様に対する配慮の薄さがとても気になりました。移動手段と宿さえ決めれば、あとはほとんどお任せ状態。障害のある方や高齢者のツアーも、中身を教えてもらうと非常にお粗末で、「こんなアテンドでは危険が伴う」とも思えました。
結局、自分は介護業界の人間なのだ、としみじみ思うのです。旅にお連れするなら、丁寧にして差し上げたい。お客様の笑顔に直接触れたい。着替えも排泄も心地よく行ってもらい、安心して旅していただきたい。そう思うと、社内で段取りを決めるだけで、現地のお客様がどう思っているかもわからないような旅行会社の仕事には、魅力を感じませんでした。
足元が揺らぎ、「自分は何をしたらいいのか」が、またわからなくなってきました。夜勤と居酒屋の仕事で慢性的に睡眠不足なのも、自分を疲れさせる要因だったと思います。そうこうしているうちに20代も終わり、30歳になったとき、「このままではいけない」という思いが強くなりました。
目先のお金を稼ぐための夜勤の仕事を、そろそろやめよう。仕事は自分を表現するフィールドだ。そのフィールドで羽ばたくことこそが、今自分がやるべきこと。だんだんそう思えて来ました。
そんなとき、看護師の友人が入社した介護・看護の事業所について語ってくれました。僕がこれまで在籍した特養や有料ホームとはまったく経営方針も理念も違う。すごい! と思いました。「介護職も募集してるよ」と聞いて、彼に「連絡先を教えて!」と、懇願する自分がいました。
最終回の次回は、訪問介護事業のサービス提供責任者(サ責)として充足感を味わっている今の心境を語っていただきます
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