出版社を退職し、ヘルパー2級の講習を受け、介護職へ。そこで待ち受けていたのは、これまでのキャリアとはまったく違う世界でした。理不尽に思えることが多く、困惑したり、憤ったり。今回は、そんなR・Uさんの様子を伝えます。
*R・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
R・Uさん(58歳)の転職経験
大学卒業後、絵本の出版社で25年以上勤務。母の介護・死を経験し、激務もあって退職
↓
3カ月ゆっくりと過ごした後、40日間かけてホームヘルパー2級の資格を取得
↓
有料老人ホームにパートとして入るが、3カ月で退職
↓
デイサービスにパートとして1年勤務
↓
現在のグループホームにパートとして4年間勤務
権限のあるベテランのパート職員…理不尽すぎる!
ヘルパー2級の講習は、とてもすばらしいものでした。男性の先生が毎日、熱を入れて介護の基礎知識や高齢者への接し方、介護の実務を教えてくれました。そこで強調していたのは、利用者さんである高齢者への「尊厳」でした。「介護は、『してあげる』のではない。その言葉の中に、高齢者を下にみる気持ちが潜んでいる。人生の先輩に対して『尊厳』を守っていくことが何より大切」と。目から鱗でした。しかし、当然のことです。私の気持ちのどこかに、「年寄りを世話してやろう」という気持ちがあったことに気付きました。そして、これまでの「人」に対する自分の接し方のダメなところも痛感しました。
しかし、実習で行った老人ホームでのケアは、先生の理想とはかけ離れたものでした。追われるようにオムツ替えや食事介助をし、利用者さんときちんと向き合う暇もありません。接する態度も、尊厳を持っているようには見えなくて、がっかりしました。
授業の最後のほうでは、私たちを待ち構えるように、ホームの運営をしている事業者が並び、スカウトします。実習では違和感がありましたが、結局私は、ある有料老人ホームに勤務することになりました。ずっと正社員として責任の重い仕事をしてきたので、この仕事ではパートとして勤務しようと決めていました。それを受け入れてくれたので、入社することにしたのです。
実際に老人ホームで働いてみると、さまざまな場面で理不尽だと感じることがありました。まず、私の上司は、正社員の若い男性でした。その彼は大学を出てまもなく配属されたので、介護の知識も業務もまだまだ未熟でした。しかたがないことだと思ったのですが、「お局」と呼ばれるパートの女性職員から、しょっちゅうバッシングを受けるのです。その女性職員は「何をやってもヘタね」と、若い上司に対して暴言も吐くのです
しかも彼女は、職員の勤務の振り分けを任されているので、権限があります。自分がやりたくない時間帯は避け、楽しそうなイベントがあれば、真っ先にそこに自分のシフトを入れてしまいます。また、日常では簡単な仕事ばかりしていました。汚物の処理など、自分がやりたくないことは一番下っ端の私に回します。
こんな理不尽な人の指図に従わなくてはならないなんて…とてもやっていられない、と思って、3カ月でやめてしまいました。
出版社に勤めていたときだって、理不尽なことはたくさんあった。でも、この職場は、理不尽のレベルが低すぎる…。とてもガッカリしました。退職金もたくさん出たし、貯金もあるし、わざわざこんな思いをして仕事をしなくてもいいんじゃないかと、本気で考えました。
しかし、私は、仕事に対するプライドが高いのかもしれませんね。「自分の苦手なことや、いやなことを理由にやめるのはイヤだ。やめるなら、十分に知識も技術もつけてからやめたい。まだ3カ月しか経験していないのでは、やめる権利はない」。そう思って、新聞の折り込みの求人チラシをながめて、また介護の世界に舞い戻ることにしました。
同僚との人間関係がわずらわしくなって
今度は、小ぢんまりとしたデイサービスで働くことにしました。そのデイは、しっかりとしたポリシーを持ち、プログラムも豊富。とても好感が持てました。長年勤務している人たちが多く、雰囲気もとてもよかったのです。長く働けそうだと期待しました。
しかし、意欲を阻むものがありました。私は普段、同年代の女性スタッフとペアで動いていました。お互いの連絡のために、個人的なメールアドレスを教え合ったほうがいいよね、ということになり、気軽に教えてしまったのが運のツキ。以来、仕事とは関係のない、個人的なメールがジャンジャン来るようになってしまったのです。
会社に対するグチ、その日の彼女の私的な行動の報告。聞きたくもない内容のメールが次々と送られ、返信にも困ります。わざと返答を少なくしたりして、距離を置くようにしましたが、そうすると次の日は、彼女があからさまに不機嫌で…。うらまれたりしたら嫌だし、関わりたくないという思いが強くなりました。
しかし、こんなことを忙しそうな社長に相談するのもためらわれました。こんなとき、正社員で働いていた前職なら、必ず上司がいて、気軽に相談ができました。配置転換などもありえたと思います。でも、小さな組織で、かつパートの立場では、人間関係がわずらわしくなったらやめるしかないんだな、と痛感しました。仕事は楽しいのに……。1回目の退職とは別の矛盾を感じながらも、またしても辞表を書くしかありませんでした。
次回は、グループホームに仕事のステージを見出したRさんの様子をお伝えします。
*R・Uさんの「私が転職した理由」…
1回目、2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
●先輩たちの職場選びの失敗事例に学ぼう
→ 「こんなはずじゃなかった…」 転職先選び 私の失敗談
●○● 介護業界で転職する時の 基本ノウハウ ●○●
介護求人ナビの求人数は業界最大級! エリア・職種・事業所の種類など、さまざまな条件で検索できます