訪問介護事業所で夜勤のオペレーターをし、小規模多機能型居宅介護でケアマネジャー、そしてクリーニング店も経営しているEさん。
それだけにあきたらず、今度は新たに勉強も始めます。自分にとっての介護とは何か、学ばなければいけないことは何かとつきつめた先に、「看取り」がありました。
*E・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
E・Uさん(53歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…14年
●介護の仕事に就く前…幼稚園教諭、乳酸菌飲料販売、保険会社営業、クリーニング店経営
●介護業界での転職回数…2回
●いままでの勤務先…訪問介護事業所、小規模多機能型居宅介護
●保有資格…介護福祉士、ケアマネジャー
小規模多機能では満たされない思い
小規模多機能型居宅介護は、利用者さんの家での暮らしとデイサービスの暮らし、両方をケアすることができ、宿泊にも対応できる、とても良いサービスだと思います。
訪問介護やデイサービスに慣れない人、デイサービスに通うには介護度が少し重い人、訪問介護+デイサービスでは使えるサービスの点数が足りなくなってしまう人などが利用しているケースが多いように思います。
「自宅で最期を迎えるため」の介護サービスでもあります。
でも、現実問題として、胃ろうになったり、要介護度が上がって寝たきりになったりすると、家で生活するのが難しくなって、療養病院や専門の病院に入院してしまうケースが今も多くて。最期を看取るケースはそれほど多くありません。
「結局最期は病院なのか?」という疑問が頭をもたげます。国は「在宅で最期まで」と言いますが、実際にはなかなか難しい状況ですね。
小規模多機能のケアマネジャーは、事務もそれほど大変ではないし、ケアプランの確認もモニタリングも、日々の訪問時間を利用して行うことができるなど、こちらにとっては都合のいいことばかりです。
それだけに、ケアマネジャーとしては経験が足りないな、と感じることも多いのです。
やはり、居宅介護支援事業所で、その人に合ったサービスを組み立て、プランを作ることをしないと、ケアマネジャーとしては一人前ではないと、痛感するようになりました。
このままでは、自分は中途半端になる。どうしたらいいだろう――。
悩んだ末、「社会福祉士の資格を取得しよう」と思うようになりました。社会福祉士は、ケースワーカーなどが取得する、相談業務をする人に有効な資格です。
成年後見人になるために、通信制の大学へ
なぜ社会福祉士の資格を取りたいと思ったかというと、それは成年後見人をやりたいから。
成年後見人は、判断力が弱くなってきた人に寄り添い、財産管理や身上監護をするのが役目です。
老人ホームなどに勤務する必要はなく、直接利用者さんとコミュニケーションを取り、月1回以上の訪問をベースに、その方の生活を見守ります。
担当した方が亡くなるまで担当するので、しっかりと寄り添える。この仕事がとても魅力的に思えました。
無資格でも市民後見人として活動することはできますが、専門職として仕事をするなら、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士などのいわゆる「士業」であることが求められます。
弁護士や司法書士はさすがに自信がなく、介護の仕事の経歴を生かすためにも、社会福祉士を目指すのが妥当だと思いました。
そこで、レポート提出で座学を、スクーリングで実務を学べる、資格取得専門の通信制大学に入学することにしました。
毎回のレポート提出は大変で、ときどき徹夜作業になってしまいます。
でも、これまで経験でやってきたことが、学問という形で学べるのは新鮮ですし、「社会福祉士になるのだ」という強い意志のもと、目標を持って立ち向かうことは、介護の仕事をする上でも大きなモチベーションになっています。
訪問介護事業所の夜勤のオペレーター、小規模多機能のケアマネジャー、クリーニング店の経営者、そして大学生。今の私の肩書はまた4つになっています。
本当は、今年1月にあった社会福祉士の試験を受験するはずでしたが、仕事が忙しすぎて、受けることができませんでした。でも来年は絶対に受けたい。そして合格して、成年後見人としても、利用者さんに寄り添いたい――。
私はいつでも、その場のなりゆきで仕事を選んできました。どれもあきらめないから、仕事が増え、かけもちで仕事をしています。でも、こんな形でも働けるのが介護業界らしさだと思うのです。
正社員として、1社だけで働くのもいいかもしれませんが、自分の理想の介護の形を模索し、パートで働いていくのも一つのやり方ではないでしょうか。
それを認めてくれる介護の場は必ずありますし、“自分の理想をかなえられる職場もきっとある”と思えるのです。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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