介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。
介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
ひろしさん(特別養護老人ホーム/3年目/介護職/25歳)
3年目ですが職員の間で派閥のようなものが出来ています。
○○部長よりの人や、主任をリーダーとするグループや、全く新しい人たちで出来ているグループなど色々あります。表面的に言い争っているわけではないですが、裏ではこそこそ言っている部分があり、それを聞いていると本当に疲れますし、嫌な思いになります。
みんな仲良くできないものでしょうか。
篠さんからのアドバイス
ひろしさん、日々のお仕事本当にお疲れ様です。
私も、特別養護老人ホームに4年、障害者施設に5年いましたが、やはり派閥みたいなものがありました。おっしゃる通り表面的にぶつかることはあまりありませんが、私もひろしさんと同じように疲労し、気苦労しました。
介護職を10年している中で、どの施設でも職員同士が完全に仲良くなるということはありませんでした(笑)。それが面白いところでもあり、逆にとても大変なところでもあり…。
これは私の経験からなのですが、どんなグループに分けられるかでいうと「相性や年齢」が近い人というのもありますが、もっと強いつながりは「考え方、価値観」が似ている人、ではないでしょうか?
もちろん「ご利用者に対する考え方」や「仕事に関する進め方」など、すべての考え方が似ているということはないと思いますが、全体として傾向が似ている人達がグループとして集まりやすい気がします。
そして、そこにはリーダー的な存在の人がいませんか?主任などの仕事上の肩書きがなくとも、なんとなくグループのリーダー的な存在の人がいると思います。
価値観や考え方が近いから自然と集まり、そこにリーダー的な存在が出来るのか、それとも、先にリーダーがいて価値観や考え方が近い人がリーダーに集まってくるのかはわかりません。でも集団がいれば、たいていの場合、リーダーがいます。また、人間が2人以上いれば、必ず異なる考え方にぶつかります。
介護は1人ではできません。ご利用者と自分…それだけでも2人。他のご利用者、他のスタッフ、ご利用者のご家族…多くの人と関わる仕事だからこそ、色々な考え方や価値観にぶつかります。その様々な価値観を知ることはとても重要です。
例えば国の政治をとってみても、衆議院と参議院に分かれ、政党もさまざま。目的は「国民の幸せ」ですが、そこに対するアプローチや価値観が違います。それがなく「一つの考え方やアプローチ」では、間違った方向に行きかねません。
人間ですから、考え方の違いや、それに伴うグループができることは当然。だからこそ、いろいろな価値観や考え方の中で、多角的なモノの見方が出来るのではないでしょうか?
施設も同じで、グループがあることは気苦労も多く大変ですが、共通の目的は「ご利用者の幸せと、そこで働く職員が働きやすい環境作り」だと思います。そこに対するアプローチや考え方が違うだけ。グループができるのは致し方ないと思って受け入れた方が気持ちが楽になるかもしれませんね。
ひろしさんご自身も「同じような考え方や価値観の人と共有している」ことだと思います。
少し余裕があったら、別の人とも話をしてみると良いと思います。そして、さらに余裕があったら「自分の考え方を言ってみるのも良いと思います」
そんな時は「自分が正しい。相手に、自分の正しい考え方を教えてあげよう」などと思わず、「違って当然だし、違った方がいい」と自分の中で繰り返し、自分に思い聞かせてみてはいかがでしょうか?
少し楽な気持ちで話がきけるかもしれませんね。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2014/8/28
最終更新日:2019/6/12