介護の仕事は、利用者の生活に寄り添う仕事。人として成長することもでき、他の仕事に代えがたい魅力があります。しかし一方で、肉体的・精神的なストレスは少なくありません。介護特有の仕事のストレス、人間関係のストレス、給与や体力への不安…
介護福祉士・心理カウンセラーの篠雅行さんがアナタのお悩みにアドバイスします。
今週のお悩み事例
きょうこさん(デイサービス 3年目 38歳)
私はデイサービスに勤めて3年目です。それまでは子育てをしていましたが、ある程度子どもの手が離れた為、勤め始めました。人間関係にも恵まれ仕事は楽しく行なっています。
しかし、夫や子どもとの関係で家庭内にトラブルがあって…。仕事中は気持ちを切り替えて頑張っていますが、やはりつらい時もあります。無理矢理自分を奮い立たせている感じです。この間、職場から家に戻る道すがら涙が出てきました。自分の精神面がとても心配です。
篠さんからのアドバイス
きょうこさん、日々のお仕事本当にお疲れ様です。
きょうこさんは家庭と仕事を両立されているのですね。
きょうこさんのような女性で家庭と仕事を両立されている方は、介護業界に多いですよね。本当にすごいと思います。
私も2012年に子どもが生まれ、親になりました。家庭と仕事の両立になりましたが、家事もこなしている方とはわけがちがいますよね。本当にお疲れ様です。そんな中、家庭内のトラブルがあり、とても辛いですよね。
また家庭を持っていなくても失恋したり、将来の悩みもあったり、他の悩みもつきないですよね。
介護職は、いつも明るく元気にハキハキとご利用者の悩みを聞き、愚痴を吐いてはならないという風潮もあるかと思います。
でも介護職だって人間です。時には自分の話を聞いてほしいくらい、辛い時もありますよね。
現場に入ったら、利用者により良いサービスを提供しなければと思いますが、自分の辛い気持ちを押し殺してまで、明るく元気に振る舞わなければならないのでしょうか?
「仕事だから、それは当たり前」との意見もあるかと思います。しかし、私から言わせれば、辛い気持ちを抑圧したまま元気に振る舞うと、無理をしている分、ふとした瞬間にイライラしたり、言葉尻がきつくなったり、自然に笑えなかったりするのではないでしょうか?
私の経験則ですが、高齢だったり、障害をもたれたご利用者は、その辺の気持ちに敏感だと思うのです。
気持ちを切り替えて仕事をしているというのは、さぞかしお辛い気持ちではないでしょうか。きょうこさんはとても器用な人かもしれませんね。
私はどちらかというと器用ではないので、矛盾した気持ちのまま元気に振る舞うことはできません。
私の場合は開き直って、自分の気持ちを認めてあげます。辛いものは辛い。辛い気持ちに対して「だからダメなんだ」と否定はしません。気持ちを認めてあげるだけです。ご利用者もなんとなく感じ取ってくれているのか、私に合わせてくれる時もあります。
「いやー、つらいんだよね〜」なんて口に出して言ってしまう時もありますが、そうするとご利用者が色々気を使ってくれたりします。
きょうこさんが弱音を発したときも、ご利用者はきっと温かく接してくれますよ。完璧な介護士を演じて、いつでも明るく元気なきょうこさんより、辛い気持ちやネガティブな気持ちを持ちながらも、人間味溢れる自然体のきょうこさんの方になってはいかがでしょう?そのほうが、ご利用者や周りで支えてくださっている職員も嬉しいのではないでしょうか?
もちろん仕事なので必要な業務はこなしますが、そんな時も無理をせずに、最低限だけこなしたらよいのではないでしょうか?
完璧な人間はいませんし、ネガティブな要素を否定するのではなく、それを認めることで、人間としての幅が広がり、心の感性が磨かれていくと思うのです。私たち介護士に必要なのは「心の感性」で、それが磨かれるほどご利用者の繊細な気持ちや心の状態の把握にも繋がるし、ご利用者に喜ばれる要素だと思うのです。
職場にプライベートな悩みを打ち明けられる職員がいたら、なお良いですね。
本当に無理な時は医療機関やカウンセリング等のご利用をお勧めします。
プロフィール
篠雅行(しの・まさゆき)
老人ホームや在宅介護事業所、障害者授産施設で介護職を務めるなかで、介護業界で働く人を精神的にサポートしたいと思い、カウンセラーの勉強を始める。介護福祉士、認定心理士、一般社団法人心理技能振興会 心理カウンセラーの資格を持つ。
公開日:2014/12/11
最終更新日:2019/9/25